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奨学生エッセイ
 
 
 
ジュースが出てくる不思議な機械
スリランカ出身。2004年4月来日。
横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻修士課程1年在学中。
趣味は、旅行、ボーリング。
将来の夢は、大学の先生、政治家。
研究テーマ:測位衛星受信信号伝送基礎実験装置の開発
 
 

私の母国であるスリランカは赤道の近くにある熱帯の国で、一年中夏だと言っても間違いがないと思います。また、スリランカでは電車があまり普及してないため、バスが主な交通手段となっています。しかし、多くの人が移動する朝や午後には、バスの本数が十分でなくいつも混んでいます。ふつうバスには冷房がついていないので、バスに乗った途端に汗がどんどん出てきて、バスを降りるときにはへとへとで、喉もとても乾いてしまいます。冷たい飲み物がほしいと思っても、なかなか買えるところが無くて困ることが多くあります。なぜかというと、スリランカでは多くの店が朝8時以降に開店し午後7時ぐらいには閉店するので、それ以外の時間帯では開いている店が少ない割にお客様が多く、また店員が一人しかいない店も多いので、待ち時間がとても長いからです。それで、少し遠いところに出かけるときは、だいたい水を持って行きます。

そのような環境に育って、今から6年間前に日本に来ました。最初の一年間は東京にある日本語学校に通っていました。学校と住んでいる所は離れていて、電車に30分くらい乗ったあと徒歩で10分くらい掛かりました。日本に来たのは四月の初めで、熱帯の国から来た私にとっては耐えられないくらいの寒さでした。学校に通っている時、暖かい電車から降りると寒すぎて、暖かい飲み物でもあったらと思いました。まわりに開いている店があるかどうか見ていたら、一人一人が、ある機械にお金を入れて飲み物をもらって行くことに気付きました。それで、私もその機械から飲み物をいただきました。それ以来、寒いときも暑くて喉が乾いた時も、その不思議な機械を使うようになりました。そして、日本語を勉強している内に、その不思議な機械を「自動販売機」と言うことを知りました。日本語学校を卒業した後、高知県に引越しました。環境は東京都と全く違っていましたが、ここでも自動販売機があちこちにありました。それで自動販売機は日本全国で、いつでも使える便利なものだということが分かりました。

ところが最近になって、コンビニのレジの前にはお客様がいっぱい並んでいるのに、自動販売機の前にはお客様が並んでいることをあまり見かけないことに気付きました。初めの頃はコンビニだと飲み物以外にいろいろなものが買えるから、みんなコンビニに行って買うのかと思っていましたが、駅構内のコンビニのお客様を見ているとジュース一本だけ買っているお客様が多くて、本当はそうではないことが分かりました。電車から降りて駅構内のコンビニまで来る間には、ホームだけでもいっぱい自動販売機があって空いていることも多いのに、全く同じもの買うために、なぜ、わざわざ何分も並んで買うのか、今も疑問に思っています。コンビニのジュース一本は自動販売機よりほんの少し安いのですが、1、2円のために何分も並んでいる人はいないと思います。また、最近、自動販売機の近くに行くと“いらっしゃいませ”と挨拶するだけではなく、“今日も暑い一日でしたね”など人のまねをする自動販売機も出ています。それを見ると人は機械と接するより人と接する方が好きだから、無理やり機械から人と同じ印象を与えようとしているのではないかと思いました。それで自動販売機を無視して、コンビニで飲み物を買っているではないかと思います。また、日本に来たばっかりの頃は、自分の国でも日本のようにどこにでも自動販売機があったらいいなと思いましたが、今は人には何の印象も与えられない、自動販売機はあった方がいいのかどうか、迷っています。

 
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