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魔法の国、日本
韓国出身/2005年10月来日
東京大学大学院 情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 2年在学中
趣味:外国語習得、ジョギング、お喋り(笑)
将来の夢:交通系の国際機関で働くこと
研究テーマ:次世代歩行者衝突防止システムの開発
 
 

私が日本のものに初めに会ったのは、やっと自分で文字が書けるようになった頃である。当時、父は仕事の関係で、日本に出張する機会が多かった。出張の際には、いつもプレゼントとして、日本の目新しいものを持ってきてくれた。物好きだった私にとって、父が帰国する日は、自分の誕生日よりも楽しいお祭の日だったのだ。素晴らしい音質のラジカセ、財布の中にこっそり入る薄型の電卓など、小さいころから数多くの日本の物を経験することができた。その中でも、ウォークマンとの初対面のとき受けた衝撃は、未だに忘れられない。手のひらくらいのお弁当箱にカセットテープが入る。そして、耳に入る小さいスピーカから、魔法のように音楽が流れて来たその瞬間、愕然とせざるを得なかった。いったい、日本という国にはどんな人々が住んでいて、どんな魔法を使ってこのようなものを世間に出しているのだろう、と非常に気になったのである。私にとって日本の初印象は、自分の好奇心と創意力を次々と刺激してくれるものがばんばんと出てくる魔法の国であった。

その魔法の国に来て初めに驚いたのは、物ではなく、他人への心遣いだった。エレベータを安全に降りるまで開ボタンを押してくれる人、乗客が席に座るまで出発せず待ってくれるバスの運転手さん、横断歩道を渡り切るまで車を止めてくれる人など、韓国にはなかなか見かけない配慮だった。これらは、小さなことかもしれないが、他人を配慮する意識が心のなかに根差してないと決して現れない行動だと思う。日本に住んできて6年目になってやっとわかったが、このような心遣いは、単に人と人をスムーズに結んでくれるだけではないと思う。この配慮する心が物作りに対して現れると、日本特有の使い勝手の良い製品になる。環境に対して現れると、省エネ運動の展開や地球温暖化防止の対策推進になると考えられる。

次に印象に残ったのは、完璧さを追求する国民性である。それを実感したのは、大学のサークル生活の中だった。大学に入ってすぐに入会した放送部、主な活動としては、毎月、地方の放送局のレギュラー番組を制作することと、春、秋に開かれる学園祭の舞台演出をサポートすることだった。番組撮影のときは、プロデューサーの頭に浮かんでいるイメージと、実際に撮れているシーンが少しでもずれたら何回も何回も撮り直した。キャスターの演出だけではなく、光との調和、レンズの絞り具合による画像の深度など、数多くの変数を合わせて、OKサインをもらえるような撮影ができるまで、相当な時間がかかったのは言うまでもない。また学園祭の時は、演出に必要なキューシートの内容通りになるように、照明の移動や音響施設にスイッチを入れるために、全員で公演の内容をまるっきり覚え、リハーサルを繰り返す。そのうちに、自然と公演チームと一体となり、完璧に近い演出ができる。このような姿は、大学生だからある程度のミスは許してくれるだろうと、甘く考えていた自分に大きな衝撃だった。その完璧性を追求する国民性は、周りの人々だけではなく、日本の様々なところで遭遇することができる。ブロックがずれることなく上質に仕上がっている歩道、ダイヤ通りに運行させようと頑張っている駅務員さんたち、そして、自分の興味分野において完璧さを果てまで追求し、限りなく熱中する日本のオタクさんには、敬意を示したくなる。

最後に、日本は小規模の作りものは世界トップであるが、大規模の作りにおける腕前はそれほど上手でない印象を受けた。わざわざ、お米の上に描くお爺さんの話まで切り出さなくても、見事な小規模の作りは我々の周辺でいくらでも見つかる。手のひらより小さくて携帯しやすい文庫本、小さく軽く、かつ燃費も良い軽自動車など、実用性あふれるコンパクト化が追求された工夫が如実に現れている。しかし、東京の中心を横断無尽する首都高や、すし詰めのように乱造された高層ビルは、見るだけで息が詰まりそうになる。これらは日本の苦手な大規模作りを実感させ、非常に残念である。NYのセントラルパークのように市民がゆったり休憩できるスペースや、パリのラテファンスのように道路や鉄道を地下に隠し快適な都市環境を作る知恵や努力が今の東京には切実に必要だと考えられる。1970年代にソウルにも、急増する交通量を消化するために、川の上に高架道路を乱立され、都市の美観が失われた。それが6年前、すべて撤去させた後、埋められていた川を流し直すと同時に、文化生活が楽しめる市民の空間に変わり、今は観光名所にもなっている。最初は巨額の予算や交通渋滞などの問題が多発すると予想された。しかし、民、官が一心となり協力することで、大規模の工事により都心がパニックに落ちることなく短期間で実現したのである。数年前から、日本政府が日本橋の景観再生に取り組んでいるようである。状況が似ていることから、韓国の復元事業のときに発揮された即戦力は、日本橋の再生事業にも役に立つと思われる。日韓両国が協力し、各国の特有の強い能力を、お互いに「いいとこどり」をしながら、人々の住みやすい都市計画を一緒に目指してほしい。

以上で、6年目となる私が感じてきた日本の印象について述べてみた。日本国民の他人を配慮する心、完璧さを追求する国民性、小規模の上手な物作りは、世界一品質のものを次々と創りだせ、日本を先進国に導いた原動力だったと考えられる。韓国がより良い方向に進むためには、上記の日本の良いところを積極的に受け入れてほしい。一方、韓国が日本より自信のある強い即戦力は、これからの日本の発展に必要な要素だと考えられる。21世紀に入って、国の概念よりも、隣接する国同士で力をあわせる国家連合の重要性が、ますます高まってきている。同じアジア圏の日本と韓国は、これからアジア圏の連合国家の結成において、重要な役割を果たすと予想される。両国の長所を発揮し、協力し合いながら、世界の発展に寄与してほしい。

 
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