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日本から学んだこと
カンボジア出身/2000年4月来日
名古屋大学大学院 生命農学研究科生命技術科学専攻 博士課程 3年在学中
趣味:卓球、散歩、読書(専門分野に関する書籍)、ビデオ
将来の夢:カンボジアの発展を目指す村長と開発学の研究者になりたい
研究テーマ:カンボジアにおける農民組織化に関する研究
 
 

小さい頃、教科書を読んで、色々な疑問を持ちました。クメール人が偉大なアンコル・ワットを建設し、繁栄した文明を築いていました。しかし、内戦直後に生まれた私にとっては、このような偉大さや繁栄した国家を理解することが出来ませんでした。戦争によって、壊れてしまった国を見ていると、ただ普通の国さえ立ち上げることができないかと思ってしまいました。このような戦争が残した社会・国を発展させる課題を背負う世代は、内戦直後に生まれた私たちなのです。

政治事情が変化し、1990年代に入ってから、平和交渉の成功によって、カンボジアは現実に平和を入手することができました。そして、国家の再建・復活のために、国際コミューニティーから支援を受け入れてきました。私は、国家復活政策の人材育成分野の支援を受けて、日本に留学しました。世界第二経済大国日本の経験などを勉強する機会を得ました。このエッセイは、日本から学んだことをまとめました。

現在の日本は、軽重工業、半導体産業、サービス業などほぼ全分野が強いです。複雑で巨大な産業構造が出来上がっています。両国の事情が違いすぎるため、比較することが出来ず、カンボジアの発展に貢献するため、どの分野を学べばよいか戸惑いました。まず「経済史」と「開発経済学」、次に「国際開発学」を学んでいく中で、少しずつカンボジアを発展させる道が分かってきました。私は常に、日本のどこから学んだら、カンボジアの復活・発展に貢献できるのかという疑問を持っています。そして、答えは、日本の産業発展史及び戦争から立ち上がった経験にあるのではないかと思いました。世界中、どこの国でも日本の様に発展・展開することは出来ませんが、日本の産業発展の経験は、アジア・アフリカの発展途上国にとって貴重な教訓になっていると思います。

現在の強い工業国家の日本を作ったのは、何百年前からの政策及び努力ではないでしょうか。江戸時代から産業基盤の前提条件を揃え始めました。幕府の鎖国は、欧州の帝国からの非植民地化ができ、日本の利益を守りました。寺子屋教育を通して庶民への基礎教育を広く普及しました。地域産業の振興による藩の特産品化の政策・制度などが促進されました。洗練した職人の育成や研究などが溜まってきました。そして、明治維新の大胆な産業革命を起こしました。イギリスの技術などを受け入れ、軽重工業化を強化しました。昭和時代に鉄道整備や全国民の戸籍制度が完成しました。戦前期はイギリスに対して、後発国の日本は後発国としての地位をうまく使って現在の重工業の技術などを短期間で入手することが出来ました。第二次世界大戦に敗北した機会をうまく利用しました。日本復興のために、アメリカの援助と世界銀行からの融資を受けました。冷戦の勃発を抑えるために、国際開発協会に加盟し、国連のメンバーに再加盟しました。また、朝鮮半島の戦争とベトナム戦争の特需を担いました。それに、強い公民の協力が見られました。企業を支える国の政策・制度が効率的に複雑で巨大な産業構造・機能をつくり、強い工業国の日本が出来たと思います。

このような教訓を踏まえて、カンボジアの現状を見ると、内戦後から残っている崩壊及び不完成の公共インフラ、人材の不足、政策・制度未整備などの産業前提条件が不足しているが分かりました。日本の江戸時代から明治時代の基礎政策及び産業の前提条件を参考にして、整備しながら、カンボジアの国民性・文化に応用して、カンボジア型の産業発展を考える必要があります。

現在直面している貧困問題を解決するために、食料安全及び地理的・自然的な強みに応じた農業を基盤として強化して産業展開させる必要があります。現在は、縫製工場がかなり発展しており、将来は、軽工業、重工業、ハイテクなどへ一歩一歩展開していくでしょう。このような産業形態の変化に応じる政策・制度及び国民のキャパシティーなどを少しずつ発展させ、整備していくでしょう。これからより詳細により深く江戸時代から戦後の日本の産業形成・構造・機能などの研究を続け、それらを応用し、カンボジアの産業を形成していきたいと思っています。

 
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