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奨学生エッセイ
 
 
 
留学によって学んだこと
中国出身/ 2012年10月来日
東京工業大学 工学部 4年在学中
趣味:小説創作、旅行、ドラマ鑑賞
将来の夢:省エネ事業に貢献する、小説を一冊出版する
 
 

今年の春休みも例年通り帰国した。小学校時代の友人4人に久しぶりに会えて、レストランで3時間ほど楽しく話した。夏に卒業を迎える彼らにとってはインターンシップを終えてそろそろ就職先が決まる時期であった。撮影を学んだAさんは地方の人気テレビ番組のアシスタントエディターとして、教育専門学校に通っていたBさんは塾講師としてそれぞれ満足のインターンを過ごせた。情報学科出身のCさんはすでに外資企業の技術開発部門の内定をもらったそうだ。

驚いたことに、日本語を第2外国語として4年間勉強し続けたのは、4人の中で、なんと3人もいた。日本の文化や現実に興味を抱えている彼らから、質問が山ほど出された。先輩と友達の優しさを正直に伝えたり、ごみ分別の仕組みなどを説明したりして満足させた。しかし、ある質問にはどうしても答えられなかった。「街にコスプレをやる人がいるのを聞いたが、それは本当か?」と聞かれて沈黙に陥った。ネガティブなイメージを与えそうなことを避けたいわけでなく、本当にわからないからであった。この4年間の生活を振り返ってみると、昼間の町の様子に関してはほとんど記憶がないことに気づいた。平日は大学とアパートの間のみ往復し、土日のお出かけも室内での買い物や雑談ばかりである。電車中ではスマホをいじり続け、夜はできるだけ早く帰宅する。一言で言うと、周りの人々がどんな生活をしているか、正直わからないのだ。

日本の話題に飽きたみんなは長期休みの過ごし方について話しはじめた。バレー部員のCさんは試合の関係で大学に泊り込んでいた。旅行好きのDさんは友人と計画を立て、国内各地の景色を見てきた。またAさんは撮影の同好とチームを組んで、ショートムービーを1本作ったそうだ。彼らに比べて、自分の生活はどうもつまらなかった。休みが始まったら親に会いたいという気持ちが強まり、大学、ならびに日本のことを一切忘れて実家でのんびりして、何事も「成果」と呼ばれるものがなかった。

その日レストランから帰ってきたら、いろいろ考えた。わざわざ国を離れて留学している意味は何かと自分に質問した。もっと経済的な余裕があり、言葉や生活習慣の違いに困らないような大学生活のほうがいいのではないか。平凡かもしれないが、塾講師であれ、技術開発であれ、興味のある仕事ができれば十分なのではないか。部屋の契約の交渉や、引越しの手配などより、旅行や趣味に精力を使ったほうが有意義なのではないか。しかし、悩んだ後にあることがわかった。留学しているからこそこのような悩みが生じるのだ。留学している間に、生まれ育った環境と異なるところになじみ込むために、常に自分の行為や考え方を反省しなければならない。このように身につけた習慣はほかの場面でも役に立つ。例えば人とコミュニケーションするとき、背景や文化による知見の違いを常に意識しているため、様々な観点を抵抗なく受け入れることができる。「このような過ごし方もあるのだ」、「このような考え方も良さそう」と自然に思うようになる。したがって、いろいろな視点を積極的に受け入れて、いろいろな側面から物事を見てそして考えている自分こそ、このような悩みを持っているのである。さらにこのような悩みはもっと深い思考の源となり、最終的には広い視野を生み出す宝物になるのである。

人間はそれぞれ違う価値観を持っている。これはいろいろ見て、聞いて、経験した上で築くものである。したがって、海外での生活を経験することによって、周りの環境に敏感になり、様々な意見を受け入れられるようになったのが、まさに留学からもらった最も大事なものだと考えている。

 
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