私は中国瀋陽から来た留学生です。日本の建築構造の耐震補強技術を学ぶため、日本へ留学しました。現在京都大学工学研究科建築学専攻に在籍し、鋼構造の構造解析と耐震設計について研究しています。日本に来てから6年が経ち、色々な知識を学んで、色々な人と出会って、充実した生活を送っています。中でも中国四川大地震における日本人の対応への感謝と地震を通して明確になった私の将来の夢と決意は忘れがたいものです。
2008年5月12日15時28分(日本時間)四川省アバ・チベット族チャン族自治州 川県にマグニチュード7.9の地震が発生しました。この地震は阪神淡路大震災の100倍の力で中国の南西を襲いました。今回の地震は長い周期で、中高層ビルと共振して、広い範囲で被害を受けました。そのため、震源から直線距離で1,750キロメートルほど離れている北京でも揺れを感じました。道路や電力・水道・通信などライフラインが寸断されました。四川大地震では6万9,197人の命を奪われ、負傷者は37万4,176人に上り、1万8,222人がなおも行方不明となっています。家屋の倒壊は21万6,000棟、損壊家屋は415万棟があります。目を閉じると倒壊した学校、被害を受けた家屋、避難生活を送っている被災者の顔、全ての悲惨な場面が頭の中で浮かんできます。今回の大地震は中国だけでなく人類にとっても、衝撃的な災害だと思います。
多くの地震を体験し、復旧や防災技術を蓄積している日本から、今回の被災地の人々に最大限の支援をいただきました。食料や医薬品だけでなく、いち早く国際緊急援助隊の救助・医療チームも派遣されました。救助ロボットなど自らの経験を生かした最先端技術を使用して救援してくれました。地震の現場で日本救援隊隊員が整列して犠牲者に黙祷を捧げた感動的な1枚の写真は全国のネットに転載されました。中国が最も困難な時に、日本国際緊急支援隊は援助の手を差し伸べてくれました。この援助は人道主義であり、日本国民の中国人に対する深い友情であり、日中友好の歴史に永遠に刻まれるであろうと思います。また、日本全国の国民は各自で募金箱を作って、募金活動へ参加し、他人ごとのように傍観せず、家族のように見えます。被災地の人々に対して、最大の激励だと思います。震災は人間の心に傷を残しますが、日本からの温かい援助はこの傷ついた心を温めていきます。「ありがとう、日本!」中国国民はこの言葉を永遠に忘れません。日本に留学している私はこの温かい援助を忘れない一方で、少しでも地震の被害を減らすため建築における耐震補強を学び、その技術を伝えようと強く思いました。
現在、中国の建築はまだたくさんの問題が存在します。今回の四川大地震を通じて、教訓をくみ取って改善すべきだと思います。耐震設計を研究する人にとって震災は悲惨な教訓でありながら研究の重要な手がかりだと思います。日本は頻繁に地震の起こる“地震大国”です。その経験を積み重ねて、技術の研究と開発が進んでいます。特に建築構造の耐震補強技術の開発はとても優れています。近年、高層建物と長周期地震の問題への関心が高まっています。地震によって建物の被害が起こるのは「地震そのものの揺れ」と「建物の揺れ」が共振するためです。長い周期の揺れは中高層建物に対する影響が大きく、しかも減衰せずに遠方まで伝わる特性を持っています。日本の文部科学省地震調査研究推進本部の発表により、今後30年以内に大きい地震の発生確率は50%以上とされています。これらの地震では長周期地震が見られます。この点は中国四川大地震と似ており、これから高層ビルと長周期の問題は深く研究されていきます。これらの耐震についての研究内容と成果は日本だけでなく中国でも応用できます。私は日本と中国における耐震研究の架け橋となって、1人の研究者として文化の伝播、そして技術の共同開発にも努力を尽くしたいと考えています。文化と技術は国境がないので、今後、学んだ知識と研究の成果を中国だけでなく世界で応用し、また世界各国の研究者とともに人類の発展に貢献したいと思います。
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