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奨学生エッセイ
 
 
 
夜間学校についての考えが変わってきた
ベトナム出身/2004年4月来日
神戸大学大学院 国際協力研究科開発・経済専攻 博士課程 3年在学中
趣味:旅行、料理
将来の夢:国際機関で働くこと
研究テーマ:アジアにおける上場企業の資金調達
 
 

数年前ベトナム語の子供多文化共生サポーターとして小学校一校と定時制高校一校に派遣された経験がある。日本に住んでいるが、日本語がまだ十分に理解できていないベトナム人の子供達を支援するという仕事であるが、逆に私もいろいろ勉強になった。初めて日本の小学校と高校の授業に入って、学生と同時に授業をうけて、楽しいのもびっくりのも多かった。今回は定時制高校に関する印象について話させていただきたいと思う。

夜間高校に関する最初の印象を一言に言うと、驚きだった。授業の内容、学校でのマナー、先生と学生の関係など、母国のベトナムと違う。でも、それは国による相違だと考えられる。日本で2つの学校に通っていたが、それともまた違うなぁ、と思った。

定時制高校はもともと、中学を卒業して就職した人のための、「昼間働きながら、夜に学校に通って勉強する」高校だというのは多分どこの国でも一緒だと思う。そういっても正直に、偏見が全くないわけではなかった。

でも、定時制高校の学生に対する印象が変わった。それはサポートに行っていた学校の校内生活体験発表会に参加した後である。その時、いろいろな学生と出会った。中学校か前の全日制高校でいじめで苦しんだ人、精神的な病気などで困った人、周りの人との関係がうまくいかなかった人、親の仕事の都合で来日し、定時制に編入した人などである。そして、朝2時に起きて新聞配達をして、5時に帰って1時間ぐらい寝てから仕事に出て、終わってから学校に通う、学校と仕事を両立している人もいる。

さらに、定時制学校には若者だけではなく、年配の方もいらっしゃる。一生懸命頑張っている年配の方の姿を見ると、感激した。母国では、40、50代に入って、また興味であろうか、高校卒業したいという希望であろうかの理由で、学校に通うのは有り得ないほど滅多にないことである。

発表大会で非常に気に入ったというか、感動した論文が一つある。

「お前って、心臓に穴があいているのなら、コルクで埋めろ」といじめられた不自由な男の学生の話である。「クラスの皆が騒ぐ通り、確かに心臓に穴が開いています。だから......プールも入れず、運動もできません。本読みも、あいうえおの「さ行」と「た行」が同じ発音になったけど、やっと読めるようになりました。」とちょっと詰まっている声で言いながら、涙が流れているのを論文の紙でみんなに見せないようにしていた学生であった。

その日の後、学校で何回もあの学生を見た。周りの友達とあまり遊んだりせずに、いつも一人で静かに本を読んでいた。確かに彼は同じ年のクラスメートほど元気ではなさそうである。確かに自信があまり見えなく、我慢強そうな顔つきをみたら、彼のことをかわいそうだと思ってしまうかもしれない。しかし、自分が彼ならば、彼みたいに頑張れるのかな、と思っていて、憧れた。

むろん、遊び優先で不良な学生もいるけれども、定時制の学生全員を批判するのは、いろいろ事情があって前へ向って頑張っている学生には失礼になる、と分かってきた。定時制の良い所は人生どこからでもやり直せるのではないかと思っている。先の不自由な学生の気に入った言葉 ―「夢中になれることがあれば、逆境もすぐに乗り越えられるものかもしれない」―を今思い浮かべた。

 
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