このタイトルを見て皆さんは何について話すかまったく想像ができないかもしれません。実は、私の母国モンゴルでは、このようなことを言われても不思議に思わない人が少なくありません。というのは、近年モンゴルでは、シャーマニズムが盛んに復活しているため、人々は魂や幽霊を信じるようになってきたからです。モンゴルの自然崇拝の根底にあるこのシャーマニズムについて紹介したいと思います。
シャーマニズムとは簡潔に言えば、私たち人間を含め、動物はもちろん、自然、地球、月、太陽そして宇宙の全てが魂を持っており、魂はそれらの物体の主的存在であると考える自然崇拝のことです。モンゴルでは、16 世紀の半ば頃までこのシャーマニズムが土着の宗教として台頭していましたが、その後仏教が入ってきたことにより、チベット仏教のラマ教が普及しました。さらに、1911 年以降、ソ連の社会主義システムの影響で昔ながら受け継がれてきたシャーマニズムは否定され続けました。しかし、人々の心の中にあるシャーマニズムへの信仰は簡単に消えることはなく、1990 年にモンゴルがソ連の社会主義から脱却し、民主化するにつれて、モンゴルの伝統的な文化復活運動が広がり、シャーマニズムも年々復活しています。
シャーマニズムは世界中の他の宗教のように、本に書かれた形で受け継がれるのではなく、言葉で受け継がれていきます。先祖の魂を自分の身に降ろして人々と繋げるシャーマンという人物が、あの世とこの世を結ぶメッセンジャーとしての役割を果たし、言葉で伝えていきます。シャーマンは天(天国の先祖)から指名された人にしかできないと言われています。モンゴルのシャーマンは、儀式を行うことによってトランス状態に入り、魂を己に招くことができます。招かれた魂はそのシャーマンと血の繋がりのある先祖です。何世紀も前に生きていた人々はこの世を去ったあと、生きていた時の善悪によって天国の魂になり、また自分の子孫に魂となって降りてくるのです。
何百年前に生きていた人の魂が帰ってくるとも言われています。シャーマンの身体に降りた魂は昔の人であるため、現代社会についてよく分かっていないことが多いです。現代の世界は物質主義であり、携帯電話やパソコンをはじめ昔の人々には考えられなかったことがたくさんあります。先祖はシャーマンを通じて再びこの世を知り、現代の生活に慣れていきます。そして、中には電話を使って話すことを習得した先祖(魂)もいます。私の友達の妹が一年前にシャーマンになったのですが、それ以来、友達の家族は天国の祖父や祖母と再会し、大昔の先祖と再会できたことをうれしく話していました。そして友達が日本に留学したとき、約300年前に生きていた祖父が妹の身に降りてきて、私の友達と電話で話していたのでとても不思議でした。その妹の声はまさに年老いた老人の声のように太く低くなっていて、昔のモンゴル語らしき方言で詩的に韻を踏んで語っていました。半信半疑だった私も息を呑み感動しました。
聞くだけでは信じられないような話ですけれども、高度に発展した現代の社会でも解き明かせない謎はたくさんあるということに気づきました。目に見える物質的な物だけを信じる現代人にとって、シャーマニズムは目に見えないけれども捨ててはいけない心とか魂というものの大事さを教えてくれると思います。 |