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奨学生エッセイ
 
 
 
中国出身/2006年2月来日
東北大学 素粒子宇宙論研究室
趣味:カラオケ アニメ
将来の夢:仲間と一緒に宇宙の真理を解き明かす
研究テーマ:素粒子現象論−主に標準模型を超える超対称性を持つ自然を記述するモデルの作成
 
 

双日財団から頂いた様々な援助及び思い出は僕の一生の宝物であります。僕は人生を通して、財団の意思を伝えて行きたいと思っています。

僕の留学生活はもうすぐ終わるので今回は、締めくくりに自分の事を書きたいと思う。

両親の都合で、僕は日本の小学校教育を受けた。その時にたくさんの友達が出来て、非常に充実した日々を過ごした。両親との帰国時は、泣きながら日本に残りたいと駄々を捏ねるほど楽しい6 年間であった。中国に帰国後は受験戦争の為、窮屈で苦しい人生に急変した。日本に留学し仲間と共に素晴らしい時間を取り戻すことが僕の目標となり、僕は只管勉強をした。勉強に時間をほとんど使うことにより、徐々に人と深く関ることをやめるようにしてしまった。目的と手段を区別できなくなってしまったのである。しかし良い事も沢山あった。その時期に物理学に興味を持ち、夢を持つようになり、夢に向かい努力するようになった。また、当初の目的である日本留学を見事達成でき、東北大学に進学した。大学院では東大の、僕の研究分野では多分日本一の研究室に受かるなど順風満帆な人生を歩み、徐々に夢に近づいていることを感じた。

しかし、東大大学院合格からは失敗の連続であった。大学院からは勉強能力以上に研究能力が必要とされる。研究は一人ではやれないので、コミュニケーション能力が重視される。人と深く関ろうとしなかった僕はその能力に乏しかった。また単純な数学力でも勝てない人が僕の研究室ではたくさんいて、僕は次第に自信を失い、夢が破れた。その時期に、孤立している僕と最後まで関ってくれた同じ研究室の先輩のN さんと、日本での母である留学生係りのn さん、及び指導教官であるY 教授にはお礼をいくら言ってもいい足りないくらいである。

夢が破れた僕は、高い数学力を必要とする研究にも手をつけられず、周りのハイスピードで過ぎていく時間に取り残されたようであった。その時にある論文を見つけた。その論文では僕の研究分野と似ているのにもかかわらず、高度な数学を使わないアプローチを取っていて、東大の研究と同等、もしくはそれ以上の価値の結論を見出せていたと感じた。また、偶然にもその論文の出所は母校である東北大学であった。更に偶然の偶然で論文の著者であるy 教授はY 教授の弟子であった。そのアプローチなら自分の数学力でも出来ると感じた僕は、博士課程で東北大学に戻ることをY 教授とy 教授との相談の上で決めた。初めて知った挫折から得られた教訓は、「人生については一般的な順位ではなく自分との相性で慎重に選ぶ」事と、「コミュニケーション能力の重要性」である。

なるべく人と関ろうと心に決めて、東北大学に戻った。今は、人生面でもアドバイスをくれる指導教官、面倒見の良い先輩、愚痴を言い合う同期、尊敬してくれる後輩に囲まれて、僕の日本留学の最終章を送っている。きっと、この環境こそが、僕がずっと求めていた小学校の思い出であるのだ。時間がかかったが、やっと日本に来た目的を思い出した。きっとこの環境は人と関ろうとする自分の踏み出す勇気が作るものなので、日本に限らずにいつでもすぐ側にあったのだ。このことは留学の戦利品として決して忘れないと心に決めた。

僕の日本での思い出はすべてが甘い訳ではない。楽しいことはたくさんあったが、悔しさ、苦しさ、悲しさがあり、成功もしたが挫折もした。しかし、それらがあるからこそ、僕は日本にまた戻ってきたことに意味を感じる。これらすべてが、僕の人生であり、これからの僕に力をくれるのだ。後は、彼女さえ出来れば最高なんだけどな〜

 
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