九州大学の新キャンパスである伊都キャンパスは文系地区の移転を以て10月にグランドオープンすることになりました。平成17(2005)年10月工学部を始めとして大学の移転が開始され、13年の歳月を経て漸く一段落をつけることになりました。
一方、移転にともない九州大学箱崎キャンパスの建物はほとんど解体され、マンション団地として開発されるらしいです。にもかかわらず、私の知る限りであると、正門の近くにある大学本部と旧工学部本館は保存されるということです。この建物は戦前から存在する歴史的な建物であります。特に旧工学部本館は九大と言えば「あの建物!」と言われるほど象徴的な建物です。ただ建物は残されても、今後どのような用途で使用されるのか目処が立っていないらしいです。大学側から地元に呼びかけて今後どのように運営するのか議論しているらしいですが、この情報も約2年前のものなので、もう決まったかもしれません。ただ、九大の部局一部がいまだに残留することになったので、すぐに様変わりはしないでしょう。
ところで、この文書を読まれる方々からこういった疑問が浮かび上がっているかも知れません―文学部出身の筆者と旧工学部本館はさすがに無縁ではないか―と。実は修士時代にこの建物にあった九大百年史編纂室でデータ入力や原稿校正などのアルバイトをしていたので、よくお邪魔させて頂いておりました。この建物の特徴と言えば、中央エントランスを基準に左右対称型の設計になっていて、時々方向感覚が狂ってしまうところにあります。私もこの建物にそろそろなれたかなと思いきや、方向感覚が狂ってしまい、廊下の反対方向に歩いたことが多々あります。あと、4階の会議室には青山熊治という戦前有名画伯の遺作が懸かっており、時々一般公開されます。
そういえば、2年くらい前に元会社員で大学の入り直しに来られたJさんという方とこの建物の将来について話し合ったことがあります。その時Jさんは「イギリスだとこういう歴史のある建物はホテルとして改造されて使われる」とおっしゃいました。それを聞いた私は一瞬閃き、こう言い返しました。「工学ホテルと名付けて高額の宿泊料で工学部OBらを泊まらせたらどうですか?( 笑)」と。
まとまりのない話で恐縮ですが、大学本部や旧工学部本館が残されることに対して、文系地区を含める他の建物は全部撤去されることに、やや名残惜しい念を覚えます。でも、残される建物に対して、それなりの思い出が詰まっているということはある意味、僥倖というべきでしょうか。
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