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故郷の自然にいつか還ってきてほしい
ベトナム出身/2015年9月来日
岡山大学大学院 教育学研究科 修士2年在学中
趣味:生け花、旅行、料理、水彩画
将来の夢:ベトナムで教育に関すNPOを立ち上げること
研究テーマ:地域における日本人とかかわる技能実習生の意味づけ
―ベトナム人技能実習生の語りを手掛かりに―
 
 

「兎追いしかの山
 小鮒釣りしかの川」

皆さんは故郷という言葉から、何を思い出されますか。私は子供の頃よく遊びに行ったベトナムの青い海、そして緑豊かな森など、美しい自然の姿を思い出します。

家族と行った海水浴、学校帰りに友達と遊んだ田んぼ、虫を採った森、どれもいい思い出です。しかし、悲しいことにこれらは今、経済発展のため破壊され、消えていく一方です。海は汚れて入れなくなり、工業発展のために田んぼはなくなりました。森は手入れをされず、荒れています。「人間が生きていくために、このように自然を犠牲にすることが果たして良いのでしょうか? 人と自然は戦わなければならないのでしょうか?」

私はベトナムにいたときからそんな疑問を抱いたまま日本に留学しました。そして日本に来て、最初に印象に残ったものは、とても綺麗な海と蒼蒼たる森です。それは子供の時に私の故郷で見た海や森と同じように美しい景色で、懐かしく感じました。外国人にとって日本の自然に恵まれた風景は魅力あるものです。しかし、私を一番驚かせたことは日本人の自然環境に対する意識です。

日本に来て最初に、生活のルールの一つとして学ばなければならないことは、ゴミの分別収集です。可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみ、粗大ごみ、なぜそんなにたくさん分けないといけないのか、最初は複雑でよく分かりませんでした。ベトナムでは、種類に関係なく一つの袋に入れますが、なぜ違うのでしょうか。そのことについて大学の先生に聞いたところ、「ゴミは資源ですよ。ごみの中にもう一度資源として使えるものがたくさんあります。ごみを分別すると、リサイクルの負担を減らすことができます」とおっしゃいました。さらに調べると、それによって、環境を守り、天然資源を節約できるようになるということも分かりました。それ以来、私は物を捨てる前に、「ごみは資源」という言葉を思い浮かべて、これを使える他の方法がないかどうか、これを捨てるともったいないのではないか、などとよく考えるようになりました。

日本人の自然環境に対する意識は、和歌、俳句、生け花、茶道、和食などにも現れています。以前生け花を習ったとき、春夏秋冬の四つの季節に応じた花を、季節の器で生けました。和食もそうです。日本人は器や歌の中に自然を表現します。これは日本人の自然に対する愛と尊敬から生まれた独特の文化だと思います。日本人は自然を大切な存在とみなし、自然に害を与えず、守るべきものだという強い意識を持っているのです。

しかし、過去にはその意識が弱かった時もありました。日本は戦後の復興のため、経済的豊かさを優先して、大気汚染や水質汚染を放置したのです。その結果、深刻な公害を引き起こしました。しかしその後、日本人は自然環境の大切さに気づき、環境保護に取り組むようになりました。そして今では、美しい自然を重視し、自然を育て管理するようになったのです。

その事を知った私は、これまで抱いていた疑問の答えが見つかりました。人間は経済的豊かさを優先して、自然環境の破壊や戦争をしたりしていますが、それは悪い結果となって必ず人間に戻って来ます。自然を犠牲にしてはいけません。人は自然を守る努力をしなければなりません。自然を愛し、共存する方法を模索していかなければなりません。

自然環境の問題は一つの国の問題だけではありません。世界共通の問題です。私の故郷ベトナムが、環境に優しく平和で安全な生活が送れる国になるよう、小さな声ではありますが、周りの人々に呼びかけていきたいと思います。

私は今、ベトナムの綺麗な海、緑豊かな森、故郷の人々と自然とが調和した、あの幼い頃の生活が懐かしくて仕方がないのです。私の愛する故郷が一日も早く、昔の自然に還ってほしいと心から願っています。

「夢は今もめぐりて
 忘れがたき故郷」

 
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