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奨学生エッセイ
2022年度
 
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コロナ禍の私
韓国出身/2022年3月来日
千葉大学 文学部 人文学科3年在学中
趣味:語学、ボクシング、ピアノ
将来の夢:人生をたのしむこと、語学力やコミュニケーション能力のいかせる職につくこと

「まだ日本行ってないの?」

聞かれ飽きた質問、返事は決まって愛想笑い。

そう。私は2020年に大学に入った。

新型コロナウイルスが流行り出し、人間のこれまで享受してきた生活様式、文化、教育、ビジネス等ありとあらゆるものが変わってしまった。コロナ禍とも呼ばれる2020年の頭から今に至るまでの時間は、エゴイズムを今なお捨てていない人間へ向けられた、宇宙の、神様の怒りにさえ感じた。

2020年4月、大学入学直後、受験生の時お世話になっていた塾から塾講師の仕事の提案があり、塾への感謝の気持ちで仕事を始めた。しかしながら入学早々、学校の授業や課題に日々エネルギーを吸い上げられ、かつ、ごく当然ながら仕事のコツなんてなかった私は最初、ノルマや時間に追われつつ心にゆとりがもてなかった。そんなある日、受験生時代の、心から日本語の勉強を楽しんでいた自分の姿を思い出す。そこで私は、生徒に日本語を楽しんでもらえるような授業を工夫するようになった。他方、塾の仕事は、生徒だけでなく他の講師や親と接することも多い。多種多様な一人ひとりとの向き合い方を吟味し、柔軟に行動していたことは、今後人生において大きな糧となるはずだ。コロナ禍にもかかわらずたくさんの出会いがあったことをはじめ、教えることに向いているという新しい一面の発見、講師という職の楽しさ、やりがいを覚えることのできたこの経験は、他では味わえないものであると確信する。

伝染病が猛威を振るい、「3密回避」や「テレワーク」が叫ばれてひさしい。外界とのつながりが希薄になり、うっとうしさが蔓延するコロナ禍、静かな部屋の中でよく孤独を?み締めていた。人との距離をコロナ前より如実に感じる時間と空間のなかでの私は、自分自身の存在意義、アイデンティティーなど人と違う私を、ある団体や社会での私ではなく、一つの個体として見つめ直した。私以外の家族構成員ができるからと先延ばしにし続けてきた料理をはじめ、映画やドラマをみる生活をしていた。日本に行けていない状況や、他の同期たちの送る日本での、キャンパスでの楽しい生活などを思うと何かしらの競技でおくれをとっているような気がしてしかたなかった。特に大学で2年になり、緩和されたコロナ対策が繰り広げられることで皆が対面授業を受けるなか、私一人だけのオンライン参加は、その気持ちに拍車をかけた。身動きのとれない状況のまま、進路も決まらないまま卒業を迎えることを考えるだけで怖くなることもあった。オンラインで行われる授業しか履修できず、選択肢が狭められたと感じるときもあった。

たまに、数えきれない悩みや不安に占拠されたあの頃を振り返る。今の私はたくさんの友達に囲まれる大学生活を送っていて、他には就職活動やアルバイトで忙しく、当時の悩みや不安を見事に追い越し、自分の道を突き進んでいる。コロナ禍のなかでも時計の針はまわり、人々は忙しく動き回る。それぞれの悩みを抱き、長い歴史を歩んできた人間だからこそ、コロナの明けるその暁には、前代未聞の伝染病に負けず頑張ってきましたねと労いの言葉を互い交わすことのできることを願ってやまない。

 
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