32歳の人生の中に、私は本当に多くの人と出会ってきました。年齢も国籍も様々で、バックグラウンドも異なる人々は、それぞれに独自の価値観や考え方を持ち、私に新たな視点と学びを与えてくれました。その経験は時に行動から、時に言葉から私の中に生きた教訓として刻まれています。その中でも、特に強く心に残っているのが「シンプルな言葉の持つ計り知れない力」です。
大学時代、私は大学の生協でアルバイトをしていました。毎朝たくさんの学生や先生が忙しそうに来ていて、その中にも人の温かさを感じる場所でした。そこで、一緒に働いていた阿部さんという女性のことが特に印象に残っています。阿部さんはあまり話さないけれど、いつも優しい目をしていて、安心できる人でした。ある早い朝、開店前に商品を並べているとき、急いでいて間違えて弁当のパックを落としてしまいました。中身は、阿部さんが綺麗に掃除したばかりの床に散らばってしまい、私はとても慌てました。周りの人も見ていて、恥ずかしくなり、阿部さんの目を見られずに小さな声で「すみません」と謝りました。しかし、阿部さんは優しく笑って、「大丈夫よ。教えてくれてありがとう。心配しなくていいよ、また綺麗にすればいいんだから」と、落ち着いて言ってくれました。その言葉で、私はすぐに安心しました。数日後、改めて「いつも優しくしてくれてありがとうございます」とお礼を言うと、阿部さんは穏やかにうなずきながら、「『ありがとう』や『ごめんなさい』は、本当に相手を大切に思っている気持ちのあらわれなのよ」と教えてくれました。その時はまだ、私はその言葉の深い意味が分かりませんでした。しかし、時間がたち、様々な人に出会い、別れや困難を経験するうちに、ようやく阿部さんの言葉の大
切さが分かるようになりました。
「ありがとう」や「ごめんなさい」は、日常でよく使う言葉かもしれませんが、実はとても大切な気持ちが込められています。これらの言葉を心にこめて伝えれば、相手の気持ちに届き、傷ついた心を癒したり、壊れかけた信頼を取り戻したりすることができます。しかし、恥ずかしかったりプライドが邪魔をしたりして、言葉にできずにいると、知らないうちに相手との距離ができてしまい、関係が冷たくなってしまうこともあります。また、ただ形だけの言葉を言うだけでは、相手に本気で思っていないと感じさせてしまうかもしれません。
また、もう一つ大切なことは、「ありがとう」や「ごめんなさい」を自分自身にも言うことです。多くの人は自分に対して一番厳しく、失敗や悪いところばかり気にしてしまいます。でも、自分の頑張りや成長に感謝したり、失敗を許したりできると、自分を大切に思う気持ちが育ちます。たとえば、「よく頑張ったね」「ごめんね」と自分に声をかけることは、心を癒し、前向きに進む力になります。自分に優しくすることは、人に優しくするのと同じくらい、大切なことです。
改めて振り返ると、たった一言の「ありがとう」や「ごめんなさい」が、適切な時に心から発せられた時、そこには人と人とのつながりを深め、関係を癒し、勇気や希望を与える大きな力があります。常にその言葉の重みを忘れず、誠実に伝えることを心掛けたいと思います。
最後に、このような学びと成長の機会を与えてくださった双日財団の皆様に心から感謝いたします。二年間にわたるご支援により、経済的な負担が大きく軽減されただけでなく、学業に対する意欲と自信を新たにし、より一層前向きに挑戦できました。皆様の温かな励ましが、私の人生を豊かにし、未来への希望を力強く照らしています。これからも、その期待に応えられるよう努力を続けてまいります。いつの日かまた、皆様と道が交わることを心より願っております。

 みんな、この2年間本当にありがとう!いつかどこかでまた会いましょう!
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