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日本のあるべき姿−外国人受け入れについて
韓国出身。2003年来日。
一橋大学法学部4年在学中。
趣味は運動。
 
 

日本に滞在する外国人の数は200万人を超えており、主要都市において国際化現象が著しい。自国を離れ、外国に移住する者たちの目標は様々ではあるが、その大多数が経済的な理由による労働の従事にあることが現状である。今後、日本労働市場に対する悪影響が懸念される等の理由で外国人労働者の受け入れを拒むことが果たして妥当であるかを、これからあるべき日本の姿がどのようなものかを考える一視点として考察したいと思う。

外国人の入国、在留の自由に関する有名な判例として、マクリーン事件判決を挙げることができる。この事件においては、まず行政により在留期間の更新が拒絶される事態が起こり、裁判所によって行政の判断に違法性がないとしてそれ是認されたという経緯が見られる。判例によれば、「外国人を自国内に受け入れるかどうか、またこれを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを当該国家が自由に決定することができる」とし、外国人の入国の自由、在留の権利は否定されている。

上記の判断に対しては、外国人の入国、在留、再入国の自由が権利として認められなければならないとの主張がなされている。憲法22条に規定されている居住移転の自由は前国家的権利として、その保障は日本国民に限られるべきものではなく、外国人に対しても等しく認められるべき性質の権利であることが根拠に挙げられている。しかし前国家的権利は憲法体制に取り込まれてこそ保護可能であり、善良な風俗の維持等の保護に値する国益が存する以上、その保持のために外国人の入国・在留に対して行政が制限を加える制度には合理性、必要性があると思われる。そして、日本国内・国際社会の政治・経済・社会等の諸事情を斟酌し、時宜に応じた的確な判断をするためには、その判断基準がある程度抽象的になることは避けられず、判断権の所在を法務大臣の裁量に置くことには合理性があると考える。

このように考えると結局既存の制度に問題はないことになる。問題となるのは制度自体ではなく、行政の裁量権行使における許容度であり、裁判所の違法判断における考慮要因の重さだと考える。抽象的基準における判断においては、態度・姿勢が結果導出の決め手になることは否定できない。そこで、行政は日本国の利益はもちろん、労働の必要性等の外国人側の利益をも重視して開放性志向の判断をすべきである。外国人労働者の流入現象は市場原理の現われとして評価できるため、受け入れに伴う具体的危険性がない限り在留を許容し、実際に生じる問題に対しては事後的制裁を試みることが裁量制度の適切な運用形態ではないだろうか。それと同時に、裁判所は在留、再入国の拒否事件に関しては、外国人の生活基盤が日本にあることを重視して違法性判断をすべきであると考える。

国際社会において日本が占める地位の上位性を考慮すると、国際労働力の効率的配分を実現するために、日本が主導的に開放性を示すことが期待されているというべきである。日本の少子高齢化による労働力不足への懸念を考慮に入れると、現段階で行政の制度運用を点検することは日本社会にとっても有益であろう。外国人受け入れに関してどの程度の開放性を保つかは、今後の日本の姿を形作る重大事項であることに間違いない。

 
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