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周囲の人々
ウクライナ出身/2013年10月来日
東京大学大学院 理学系研究科 修士1年在学中
趣味:冒険、好きな人と時間を過ごすこと、描画、プログラミング
将来の夢:良い人になること
研究テーマ:ニューロンの軸索の再構成に関わる因子
 
 

我々は人に囲まれて生きている。それどころか、東京のような大都市だったら一人になれる場所はほとんど残されていない。壁に隔てられても他の人がすぐそばにいるから。なのに、大都市ほど孤独を感じている人が多い。大勢の人に囲まれていても喋れる相手はいない。携帯の画面に留まっている視線を周りの人の顔に向けられない。

異国に住んでいる外国の人だったらまだわからなくもない。文化や言語の壁があり、喋りたくても自分が考えていることを言葉にうまく出せないから。それでも必死に喋ろうとしている人がいる。片言しか喋れなくても顔の表情やジェスチャーで意思疎通が成り立つから。その反面、言語が完璧に喋れても自ら喋ろうとしない人も少なくない。自分がそのような人をみて疑問に思うことがある。「寂しくないのか?」と。

そのような人はそもそも他人を必要としていないのかもしれない。一人でいても満足ができるのかもしれない。自分にもそんな考えを持つ時期があった。人との交際が面倒で、他人と時間を過ごすよりも一人で好きなことをやるのは自分にとって普通だった。そのまま一生でも浅い友情しか感じずに、他人事に巻き込まれず生きていけると思っていた。

だが実際は違っていた。日本に来てから初めて気づいた。どんな時でも自分が一人ではなかった。いなくてもいいと思っていた友達は自分にとって大切で、一人で過ごした時間よりも他人と一緒に過ごした時間の方が記憶に残っていた。

日本で過ごした6年間は出会いと別れの繰り返しで、どうせ別れるからもう誰とも仲良くならなくてもいいと思った時もあった。しかし、そんな考えは愚かであると自分でも気づいていた。色々な人を知れば知るほど周りの人に興味ができて、みんなと仲良くしようとするようになった。周りから壁を作らないから、友達も作りやすい。だから日本で作った友達がたくさんいる。むしろ、今となって日本にいる友達の方が向こうの倍になっていると思う。

もちろん、研究と勉強で忙しいから友達がたくさんいても一緒に遊べる時間がほとんどない。他の人も同様で、忙しい生活の中で自分が一緒に時間を過ごしたい人と時間をあまり過ごせないと思う。だからこそ実際に会う時はよっぽど大切に感じる。そういうひと時から自分の大事な思い出ができてしまうから。

だから私は一人でいようとしている人を理解できない。もちろん、一人でいたいと思う時もあるし、誰とでも仲良くなることも不可能である。だが、誰とも仲良くしようとしなかったら、自分が大切に思える友達も見つけることはできない。みんなから心を閉ざしていたら誰にも傷つけられずに済む。けど、心を開かなかったら満たされることもない。

だから私が自分の心を隠さない。傷つけられても、バカにされても私が他人に手を伸ばしたい。友達になりたいから。一緒にバカなことをやりたいから。誰とでも友達になれると思わない。けど意思が通じ合える人がきっとその中にいる。

現代の社会では孤独を感じている人は少なくない。他人を怖がったりしていて、自分を様々な壁で守ろうとしている。だが、人なしで守るものも何一つもなかっただろう? だからみんなに希望を持っていて、「他人」を怖がらないでいて欲しい。「他人」には必ず自分にとって大切になる人がいるから。

 
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