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福島へのホープツーリズム見学
ベトナム出身/2007年9月来日
広島大学大学院 生物圏科学研究科 博士課程前期終了
趣味:ボランティアをする、料理をする
将来の夢:教授、環境や福祉健康リーダー
研究テーマ:根圏におけるセシウム動態(植物と微生物の相互作用によって根の周りのセシウムの吸収がどのように変化するか)
 
 

福島へのホープツーリズム見学。平成29年10月27日(土)から29日(月)。

このツアーに参加した動機は、3月11日の大震災から7年後の福島の現状について知りたいと思ったことです。私達のグループは広島大学の15人の学生で、中国、インドネシア、ミャンマー、日本、台湾、ベトナムなど、様々な国の出身者が集まりました。

ツアー初日には、朝6時半に家を出ました。東広島駅で7時に集合し、ツアーへの出発を待ちました。現地まで電車で7時間近くかかり少し疲れましたが、驚いたことに、現地ではホープガイドが出迎えて歓待してくれました。暖かい歓迎に包まれて、いわき市の風の冷たさを感じなかったほどでした。

最初に訪れたところは、「リプルン福島」という施設で、福島の復興のための環境と情報の提供を目的としています。この施設は日本政府の環境省に所属しており、福島に一時貯蔵されている放射性廃棄物処理に関して、一般の人々にわかりやすく説明しています。画像で表示される双方向タッチパネルと明快な説明、そしてライブカメラによって、廃棄物がどのように処理されるのかが大変わかりやすくイメージできました。

その後、ボランティアガイドをしている元原発従業員に会いました。福島原発で実際に起こったことを一般の人々に伝える活動をしている人です。私たちはバスの中や楢葉キャンバスと名付けられた楢葉地域の総合施設へ行く途上で話し合いました。その施設は伝統と現代を併せ持つ、新しい街の姿を象徴しています。シニアから新生児までのあらゆる世代が、その地域社会で円滑にコミュニケーションできるように、同じサービスと環境を共有しています。入口のホールでは、町に戻って来た住民が作成した数多くの人形や手作り製品の小さな展示スペースがあります。展示物はどれも美しいです。この施設を見学していると、この地域社会にもたらされている新鮮な風と希望を感じることができました。

第2日目は、青木よしこさんと話をしながら、富岡町を巡りました。青木さんは町内のあちらこちらに引率して、災害の前後の状況を説明してくれました。私は、災害で行方不明になったままの25歳の警察官の話に心を動かされました。美しかった町が崩壊して今もなお打ち捨てられており、そこにはあまりにも多くの悲話がありました。私は胸をえぐられるような思いでそれらの話を聞きましたが、青木さんやその地域の人々が、町の将来について語るときの前向きな考え方には感銘を受けました。富岡町には、被災前は1万人以上の住民がいましたが、戻って来たのはたった800人です。しかし、富岡町が新しく生まれ変わり、800人の生活が再出発することを考えると、地域の人々は強い意志をもってこれからの課題を克服し、800人の人生を豊かにしていこうとしています。私はその考え方に心から共感し、現住民の生活の質を大切にすべきだと思いました。再びここに戻り、2.2キロの街道に沿って美しく咲く桜を見たい、そしてこの町が生き生きと変貌していく姿を見届けたいと思いました。

富岡町を後にして、浪江町に向かいました。そこでは災害生存者の人たちが、3月11日の体験談を語ってくれることになっていましたが、その日は収穫祭の日だったため、代わりに、この町を襲った災害についての映画を観ました。泣かないように我慢しましたが、涙が溢れて止まりませんでした。この災害を目撃した人たちの体験はあまりに悲惨で二度と同じことが起こらないように、この体験談を他の人たちに広め、さらに次の世代に継承していくべきだというメッセージを私たちは映画から受け取りました。

お弁当を食べた後、第2回浪江エゴマ収穫祭に参加しました。私たちは胡麻とカボチャから作られる町の特産物をいろいろと紹介されました。どれもみな新鮮で美味しかったです。さらに興味深かったのは、町で野生の胡麻を植えて育てたのは、栄養価が高く健康に良いという理由からだけではなく、環境と市場に適応したためだということです。

祭りの間、私は飲んだり食べたり、住民の人たちとしゃべったりと、楽しい時間を過ごしました。住民のほとんどは、笑顔の美しい素朴な農家のお爺ちゃん達でした。その時に私が感じた素朴な美しさと活発な話のやりとりを忘れることができません。その後向かった請戸地区と小高地区は、以前訪れたことがありましたが、復興が進んでいて嬉しかったです。

これまで日本でいくつかの地域社会を訪れましたが、共通点はその土地への住民の深い愛情です。その愛情こそが、土地に戻り故郷の再建を始める動機となっているのです。住民たちは皆、他からの援助を待ったり要請したりすることなく、生活の再建に立ち向かう強い力を持っているように思えます。これこそが、福島の地域社会を復興する大きな要因なのでしょう。

ツアーの3日目に見学した広野町のハッピーロードネット・プロジェクトでも同様の要因を見ることができました。このプロジェクトは、地元の高校生が始めました。2020年のオリンピックを通じて、福島の美しいイメージを世界に発信しようという大きな夢を抱いて、高校生たちは、復興中の地域を通る浜通りに、一万本の桜の木を植えています。桜の木は日本の国花ではありませんが、日本文化の中で際立った地位を占めています。私はこのアイデアに賛同しており、彼らの夢が実現することを願っています。私たちは桜の木の周辺にあるガラスの破片を除去するボランティア作業に参加しました。ほんの少しでもこのプロジェクトに貢献できたことは私にとって有意義なことでした。

最後に私たちはテーブルの周りに座ってワークショップを開き、3日間のツアーで学んだことの総まとめを行いました。ワークショップのおかげで、福島の過去、現在、未来、そして福島の強みや課題について私の頭で交錯する考えを整理することができました。時間が経てば、私が訪れた場所の地名、出会った人たちの名前、美味しかった食べ物の名前などを忘れてしまうかもしれません。しかし、故郷への愛、地域社会の精神、ゼロから立ち上がる強い力について教えてくれた住民の、希望に満ちた瞳と美しい笑顔は決して忘れることはないでしょう。

ホープツアーに深い感謝を捧げます!

 
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