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奨学生エッセイ
 
 
 
日本の中華料理店事情について思ったこと
中国出身/2012年10月
東京工業大学 物質理工学院 修士課程卒業
現職:日産自動車株式会社 研究開発職
趣味:旅行、ドライブ、映画鑑賞、カラオケ
将来の夢:世界一周する
 

先日、東京の大学院に通っている妹に久しぶりに会え、彼女の大学の近くに新しくできた中華料理店で昼食を食べました。彼女の長く続いていた就職活動がようやく終盤となったため、内定のお祝いをしてあげました。

その日に食べたのは、中国東北料理「鉄鍋?(トン)」でした。テーブルにはめてある巨大な鉄鍋にじゃがいも、いんげん、とうもろこし、スペアリブなど好みの具材を入れて、じっくり煮込んでから熱々に食べる、極寒の中国東北地方の代表的な料理です。東北地方出身の二人にとって、とても懐かしく幸せな時間を過ごせました。

さてこのように、最近日本では、「本格」中華料理店が増えてきています。その特徴として挙げられるのが、郷土料理のお店が続出していることです。昔、中華料理を言うと、四川料理を思い浮かべる人がほとんどでしょうが、今は街中に「香港料理」、「西安料理」などが現れ、中華料理のダイバーシティもだんだん伝わってきているでしょう。

日本に暮らしている中国人として、特にコロナ禍で帰国が困難となっている今、それは大変ありがたいことです。10年前、最初に日本に来た頃、本格中華料理店どころか、中華物産店でなじみのあるお菓子を一口でも食べられると最高の幸せでした。それに対して今はテレワークしながらデリバリーアプリを開くと、本格中華料理店が3軒以上配送エリア内に入っているので、30分程度で本場の味が味わえるようになっています。

大学時代はスマホのメモ帳に「食べたい料理」というリストを持っていました。どうしても食べたいが食材もしくは調味料が入手できないか、お店にないので食べられないものを書き留めて、帰国時にお母さんに頼むようにしていました。今は少なくともこの1、2年間リストの更新が止まっています。なぜならふるさとの味はもちろん、前述したように他の地域の代表的な料理も日本にいながら食べられるようになったので、お母さんの手作りに匹敵する環境になりました。

国の味を堪能するもう一つの手段として、国際配送も利用しやすくなりました。中国のネット通販で食材を購入し、専門業者に頼めば、中華物産店や中華料理店よりも手頃な価格で入手することができます。もちろん安全衛生の関係上、配送できる食品の種類は限定されますが、それにしても選択肢は無限にあります。例えば中国のSNSで流行りとなっているお菓子類もこのように入手できるので、海外にいるからといってSNSの話題についていけないことはなく、10年、20年前と状況がずいぶん変わったでしょう。

流行りといえば、おもしろいことに、近年中国で人気になったチェーン店も、次々と日本でも出店するようになりました。本来低価格を売りにしているお店で、3倍、5倍もの値段まで払うのに少々違和感を感じますが、味というより母国の雰囲気が感じられるのが何よりです。お年寄りから子供まで誰でも知っているチェーン店ですが、国に帰れないゆえに一度も味わったことがないという残念なことがなければ、満足です。

続々と増えている本格中華料理店ですが、看板やメニューが中国語で書かれていて店員さんも中国語で話しかけてくれるようなところもあり、日本人の方にとっては入店しづらいという声も上がっているようです。実際にお店巡りをした経験からしても、中国人もしくは中国人に連れて行かれた日本人が客の大半を占めるのが現実です。また、一部のお店では、内装やカトラリーで本場感を演出しているわりに、料理の味はそれほどでもありません。現在、帰国できない人が増えているためか本格中華料理への需要も高まっているでしょうが、今後長く続けられるためには、自己満足に陥らず食文化が正しく伝わるようにしっかりした管理と工夫がまだまだ必要だと思われます。

 
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