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奨学生エッセイ
 
 
 
坂登り
中国・内モンゴル自治区出身/2023年4月来日
東京大学大学院 経済学研究科 マネジメント 修士1年在学中
趣味:バレーボール、旅行とSF映画
将来の夢:猫を飼うこと
研究テーマ:評価価値を入れた顧客価値モデルの構築
 
 

東京にやってきて最初に手に入れたものは、美しく青い色調のママチャリだった。この自転車に乗って毎日学校に通っている。通学路は長いとは言えないが、三つの坂が点在している。三つの坂を三度登り、三度下りれば学校に到着する。

坂を登る際は、最も厳しい段階に差し掛かり、全身の力を集中して自転車をこぐ必要がある。特に途中まで来ると、汗がだんだんと滲み出し、足も熱を帯びてくる。残り半分の坂は、力尽きてしまい、もはや体力と意志の戦いと言っても過言ではない。

しかし、坂の頂上にたどり着くと、いつも素晴らしい景色が広がっている。文京区の道路両側には大きな銀杏の木が並んでおり、風が吹くたびに銀杏の葉がゆらめいて、まるで緑の海を思わせる。この瞬間、自転車で緑の海に向かって一気にダッシュすると、坂を登る際の疲れが一気に消え去る。晴れた日には、太陽の光が風と共に揺らめき、地面に映し出された影も波のように寄せてくる。毎日このような風景を見ると、心が癒され、新たな一日に向けて再び頑張る気力が湧いてくる。

実家にも似たような坂道がよくあった。

実家は中国の内モンゴルにあり、「フフホト」という名が付けられた。それはモンゴル語で「青い色の町」という意味だ。地元の北には「大青山」と呼ばれる山があり、名の通り高く青々とした山だ。地元の名前もこの山から作られた。高校へ通う際には、一つの大きな坂があり、あさ学校に向かうときにはちょうど東の朝日が見え、帰り道ではいつも山の姿が見えた。地元は北の方であるため、冬はいつも寒くて雪がたくさん降る。大青山も白い山となり、遠くから見るとスノードームの中の飾りのように輝いて見える。坂を登る際は、ほとんど周囲が見えないが、上に登れば登るほど山々の姿が現れ、それを楽しみにしていた。放課後には山を眺めながら、自転車で坂を疾走するのが大好きだった。

考えてみると、これまでにたくさんの坂を登ってきた。大学の入試や日本への留学など、長期的な計画を立てて一歩一歩未知の坂を乗り越えてきた。坂の頂点まで何度も失敗を味わい、諦めようと思ったこともあるが、その後の景色に魅了されて何度も再挑戦してきた。坂の頂点に辿り着いた時、新たな景色が広がり、これまでの悩みや悔しさは汗のように軽く消えていく。逆に、坂をゆっくり登らないと、途中の景色も見失い、頂点の景色も魅力を失ってしまうかもしれない。

私の好きな日本のドラマには、「人生には三つの坂があって、上り坂、下り坂、まさか」というセリフがあった。私にとっては、坂を越えた先の「まさか」こそが人生の楽しみであり、さまざまな坂を登ってさまざまな景色を見に行きたいと思っている。東京に来る前は、自分自身で上手く生活できるかどうかに不安を抱えていたが、東京に来て初めて通学路の景色を見て、「これを見れば頑張れる」と思ったのだ。最近は天気も暑くなり、夜になると自転車で散歩することも始めた。地図を使わず、ただ自転車に乗って美しい光のあたる場所へ自由に散策するのだ。幸運な時には、星も美しく見えることもあり、まるで夜の風とともに光の宇宙に飛び込むような冒険だ。これは坂登りのご褒美だ。

これからの道は誰にも予測できないが、私の人生にはきっと坂が存在し、その坂を越えると素晴らしい景色が待っているに違いない。

 
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