私は中国瀋陽から来た留学生です。時間がたつのははやいものです。日本に来てもう4年間も経ちました。大学でたくさんの友達ができて、毎日充実の留学生活を送っています。そして、私は9月の修士試験に合格して、私は修士課程で研究していきたいことについて述べたいと思います。
私は大学の社会学の授業を通して、社会における福祉のあり方、その中でも特に、日本社会における顕著な現象の1つである少子高齢化と福祉のつながりに興味を持ちました。現在、中国では「一人っ子政策」の結果、高齢化率7%を超えて、本格的な少子高齢化社会に突入しました。よって、今後、高齢者の問題は避けることのできない社会問題となります。
日本においては、1980年代の前半から、高齢化問題への認識があって、財政基準の不安定化のなかで、高齢者社会を考慮に入れた社会福祉政策に対する様々な批判が起きました。しかしながら、福祉国家は各国の産業化、近代化の歴史的な経緯によって形成されています。そのため、国際研究によって、各国におけるそれぞれの発展の特性やそのパターンや差異などを明らかにする必要があると思われます。同じアジア地域にある中国では、社会主義国家であるが、経済の発展にともなって、国民に対する福祉は国家が担う方向に変化してきています。同じアジア地域にある日本では、単に経済の先進国だけではなくて、その高齢化問題も中国より先に20年以上の経験があります。中国にとって、高齢者問題への対応は、もし日本の基準に自国を位置づけたら、日本を手本に対策を取れれば、そのなかに中国の特性を明らかにすることが可能になるだろうと思います。
日本では「日本型福祉社会論」という言葉がよく使われています。そこでは、伝統的な家族や企業内部福祉の役割が強調されて、国家の役割と保障は限定されるという考え方が示されました。しかし、90年代に入ってからは、反福祉国家的なことが弱めてきて、ボランティア活動による市民参加の役割を重視する「参加型福祉社会論」が、有力になってきました。
同じ年代の中国を振り返ると、1990年代の後半から、高齢者問題が認識されたが、高齢者の社会保障システム制度が不完全であって、中国政府は社会保障に対して、これまでさまざまな改革を行っていました。さっき言ったように、中国では本格的な高齢化社会に入ることによって、高齢者の問題も避けられない社会問題となっています。現在、福祉制度はまだ不完全なため、日本と同じように伝統的な家族の役割と企業内部の福祉の役割はまだ機能しています。現在、中国の高齢者福祉に関する福祉制度と政策は、すべての国民に対して平等とはいえないこともあります。つまり、中国は驚異的な経済発展を遂げてきたが、一方では経済不況の影響を大きく受けています。そのため、社会保障制度の整備の道路についたばかりであるのに、経済発展途上であることと経済不況にあることの理由があって、高齢者福祉施策の拡充が後回しになり、鈍くなる危機状況にあります。
また、人口の問題を考えると、先進地域では経済発展の結果、より快適な生活を求めて人口抑制がなされていたが、発展途上地域では経済発展のための人口抑制が行われて、経済発展と人口転換は同時進行しつつあります。そして、経済発展に伴う医療の充実は、幼児死亡率の低下と平均寿命を引き上げるとともに、高齢者介護期間の長期化を招くことになります。また国家単位ではなくて、個人・家族単位に人間の安全保障の観点から見れば、すでに特定の都市・農村部において家族形態の変化、少子化、高齢化が起こっています。
確かに、高齢者問題はマイナス面があるが、高齢者の積極的な社会活動が高齢化社会の経済的活力になることもあります。寿命の延びにしたがって、健康で能力ある高齢者が増えています。さらに要介護高齢者のような社会活動に参加する高齢者も、その存在自体が大きく社会の経済活動に役に立つ可能性があります。
私は修士課程における研究する目的は、高齢者福祉についてさまざまな視点から多角的に分析することにあります。そこでは、中国における高齢者に関する家族福祉と地域福祉を主体として、中国型高齢化社会を考慮に入れた家族の現状、地域福祉の現状を高齢者の社会保障システムなどについて研究していきたいと思っています。ここでは、家族福祉と地域福祉に関する認識を、基本的に日本で得た定義に基づいて、中国の現状を考察するつもりがあります。つまり、日本で得られた定義は、家族福祉とは、制度としての家族概念を規定することではなくて、集団として機能している家族ニーズを満たすことです。地域福祉とは、地域社会における社会的資源の交換システムにおける特定状態として理解されます。
ここでは、高齢化の問題についての定義には、個人の高齢化問題と人口高齢化の問題という二つの側面が含まれます。個人の高齢化問題は、高齢者の雇用、高齢者労働権力保護、居住条件、生活環境、高齢者家族、高齢者社会福祉、高齢者の所得保障、高齢者の文化活動と教育事業などさまざまな側面に及んでいます。人口高齢化の問題は、総人口に占める高齢者人口比率の上昇を目指して、これによって生じる家族の変動、社会の変動、及び政府の高齢化対策を検討対象とします。これらの問題のうち、私は特に人口高齢化の問題及び高齢者家族、高齢者福祉の問題との関連で分析していきたいと考えています。
また、家族福祉と地域福祉について、日本における研究の結果を読みながら、中国における高齢者福祉の現状を分析したいです。研究する一部分の分析では、比較文化的観点を取りながら、中国と日本を比較したいと思います。その理由は中国と日本は同じ儒教文化圏であっても、儒教の影響力は異なって、両国と比較することによって、高齢者福祉をめぐる状況がもっと明らかにできるからです。
つまり、中国は高齢者福祉および高齢化の社会保障分野において、いまだ制度的な整備がなされていない状況です。高齢者の社会分野において先進国である日本の経験に基づいて、大学で得た知識を参考にして、日中両国の人口構造を比較しながら、中国にとって、何が参考になるのかについて考察して、研究していきたいと思います。当然、国情や文化の風土が異なるため、日本の経験をそのまま中国の政策と実践現場で模倣することができません。それゆえ、私は日本の高齢者対策、法律整備、政策動向、住民参加などの経験を、文献だけではなくて、社会調査で得たデータをもとに、客観的に分析つもりです。修士課程では、私は地元である中国の瀋陽を対象として、高齢者の生活現状を高齢者福祉の現状に関する調査を行いたいと思います。やはり調査を通して、中国における「都市高齢化」の進展の中で、そこに生きる高齢者のライフスタイルとそれから導き出される生きがいの構造を理解したいと考えています。つまり、調査で得られたデータをもとに、高齢者問題を中国社会の高齢化を強く意識しながら、日本における都市社会学の概念と方法を用いて、現代中国の「都市高齢化社会」の考察を試みたいと願っています。
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