このような言葉があります。凡人は天才に負ける、天才は楽しんでいる人に負ける、楽しんでいる人はオタクに負ける。
自分が作った言葉ですが(笑)。
オタクという言葉が日本の素晴らしい文化を表す一つになると思いました。私がこの文化を初めに感じたのは大学の入学式が終わってオリエンテーションキャンプに行くバスの中でした。楽しい大学生活の始まりだったので、さっそく隣の仲間に声をかけました。「趣味は何?」すると、期していた答えと違って、彼はわけ分からない物理学者の名前を言い出しながら「この人たちの本を読むことです」と答えました。「それが趣味と言える!?」と最初は思いましたが、自分が好きなことに夢中になって頑張っている彼の知識と内容の深さに感動され刺激をうけました。
私が刺激うけたのはこれだけではなかったです。日本に来てから心遣い、配慮、絆などの言葉をよく耳にするようになりました。人との関係を大切にする日本の文化が生み出した言葉であると思います。このような気持ちが様々なところにしみ込んでいるのを見つけました。
日本の建築に興味がある私は、代々木にある国立代々木競技場を見に行ったことがあります。建築界のノーベル賞にたとえられるプリツカー賞に受賞した丹下健三さんの手によるものだったので、期待をいだいていたわけでした。彼の建物を目の当たりにした私は「名物に旨いものなし」という諺を疑うことにしました。その形は大きい柱から屋根全体が吊り下げられているような珍しい構造で、この技術力には全く見当がつかなかったので、家に帰って調べました。私が驚いたのは表からの技術力ではなく、技術力に潜んでいる人に対する心でした。独特な形であった屋根は観客が競技により集中するように思案された構造であり、災害から人々の安全を守るための様々な取り組みがあったわけです。ここで丹下健三さんのある言葉が思い浮かびました。「建物は空間と空間を切り離すものではなく、空間に新しい意味を与えるものである」。初めて丹下健三さんが話した「新しい意味」について考え始め、それは彼がみんなに伝えたい気持ちではないかと思いました。つまり、建物というものがただのものとして存在しているわけではなく、自然と人の気持ちを繋がり、それらが共存できる場を作るという新しい空間を生み出し、そこから人を大切にする気持ちが、みんなに幸せを与えるということです。きっとその幸せが彼の幸せになって戻ってきたでしょう。
オタクさんの優れた能力を生かして、人を考える技術になることこそ日本の力だと思いました。自分もいつかは人に笑顔が与えられる力を持つ人になり、それが自分の幸せになって豊かな人生を生きていきたいです。私は留学を通じて日本の科学技術だけではなく、相手のことを考える気持ちについて学ぶことができ、とても嬉しく思います。これが自分なりの科学のあり方を考えるきっかけに繋がり、有意義な生活を送る力になってくれました。これからも自分ができることを考え、みんなが幸せになる社会を築き上げるために、頑張っていきたいと思います。ありがとうございます。 |