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日本から学んだこと
米国出身/2010年9月来日
東京大学大学院 学際情報学府 博士課程1年在学中
趣味:撮影、都市を散歩、詩を書くこと
将来の夢:都市開発や再開発を通して都市民のためよい環境を作ることに役割を果たしたい
研究テーマ:神保町における都市地理学、知恵、本の市場
 
 

2年前、私は神保町での研究を始めました。インターネットが神保町に与える影響を調べたかったので、そのとき、研究のため古本屋のオーナーにインターネットの取り組みについてインタビューを行うことを企画しました。そして、神保町のあるカフェにあるコミュニティとすぐ強い繋がりを自然に作りました。

そのカフェはとっても昭和的で、店に入ると、レコードから流れるジャズと暗い木の環境は落ち着きました。オーナーと彼のお母さんには本当にお世話になって、研究に役に立つ人を紹介して頂きました。そのカフェのカウンターで、日本の有名な音楽家やたくさんの芸術家、元「会長」さまにも出会いました。そこで、たくさんの忘れられない会話ができました。二年後、そのコミュニティのメンバーになりました。私の日本での経験で、多分一番幸せな午後と夕方をそこで過ごしました。

いつでまでもあるものではないが、その建物がなくなってしまうことを聞いたとき、本当に悲しかったです。もちろん、あのカフェのオーナーは神保町に二号店も営業していたので、たくさんの常連はそこに移動しましたが。しかし、何となくあのカフェは特別な場所でした。私は都市空間を研究していますが、学者の方が「空間にも歴史が刻まれる」と言われるのを聞いたことがあります。この言葉は抽象的な言い方で、分かりにくいです。空間は人間のように記憶力を持たないし、またある場所や空間に対する感じ方は、人により様々だと思うから。しかし、あの「昭和っぽい」カフェを訪れたら、すぐ具体的に感じられると思います。あの空間には、そこで昔、詩を書いた人や話し合う恋人達や読書をする人がいたことが感じられ、何となくそれらの人々の足音までも聞こえてくるような気もします。その歴史的な雰囲気の上に、あのカフェの親切なコミュニティと出会ったら、すぐにも仲間になれそうな気がします。

建物が壊されてから一ヶ月ぐらい経ちました。実は地震の時は怖かったです。しかし、今神保町を歩くとき、「あのカフェに友達がいるかな、行って見ようか」とよく思いますが、一瞬でもう行けないんだと思い出します。そのカフェで沢山の友達ができましたが、初めて出会った場所に戻れません。そういうところはカフェかレストランだけじゃなくて、コミュニティの中心になります。あのカフェを通して出来た友達は今から長い付き合いになるが、初めて出会ったところはもう東京から消えてしまいました。

今、修士の研究が終わりましたが、博士研究でも神保町を対象として進めようと思っています。間違いなく、あのカフェのようなところが見つけられるだろう。しかし、都市空間を勉強してきた私には、あの場所は東京の「下町社会」についてはるかに多くのことを教えてくれました。

 
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