有楽町駅。就活生に見える人たちが足早に歩いている。説明会が行われるビルの前でコートを脱ぎ、ビルのガラスに微かに投影された自分を見つめながら身なりを整える。就職活動が始まって、第二の思春期が訪れた。エントリーシートの「私はどんな人なのか」という質問にいつも悩む。ガラスに投影されて見える自分の姿のように眉間にしわを寄せないとなかなか見えてこない。
友達と会っても話題はいつも就職活動の話。エントリーシートの自己PR と面接に対する不安。3 年生という早い時期から始まる就職活動に対する不満。先行きの見えない不安に駆られるのは、明確な基準がないからだ。と言うのも、留学生の私からすると、日本の就職活動における企業の採用基準は曖昧で不透明な印象を感じずにはいられない。「ポテンシャル採用」。可能性を持っている人を社会で活躍できる人材として育ててくれる考え方である。このポテンシャルは個人的な人格により判断されるものであり、それが自分に存在するのか、またこのポテンシャルを伸ばすためにはどうすればいいのか、という見えない問題に対する答えを見つけるのが就活生の共通の課題だろう。ここで日本と正反対の採用を行っている韓国の就職活動を紹介したい。
ソウルのノニャンジン。数多くの就活生が寮で生活をしながら就職の準備をする学生の町だ。就職するために寮生活までしているという現実が日本で就職活動している私と日本の学生からみると理解し難い。しかし、日本と違って韓国は「スペック採用」。TOEIC731 点、GPA3.5、資格3 つ、語学研修、インターン経験。これらが今年入社する韓国の新人社員の平均スペックで、大手企業の場合TOEIC はこれより平均100 点高く、GPA は4 点にものぼるらしい。
学生たちは春休みも返上し、英語の勉強、資格の取得に励む。スペックが満たされないと休学をして卒業を延期している学生も数多くいる。韓国では、最近のこのような社会の流れを「3 放世代」という言葉で表しているそうだ。就職の準備、就職難で20 代の若者たちが、恋愛、結婚、出産という3 つのライフイベントを放棄するという社会現象から作られた言葉だという。
明確な基準で学力社会に走ってしまい、学生たちを画一化させてしまう韓国の採用。試験の点数で決まるものではないため、不明確で不公平にもみえる日本の採用。このように正反対の採用基準を持つ日本と韓国。いずれにせよ、何らかの歪みは現れてくるだろう。 |