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奨学生エッセイ
 
 
 
留学4年目に入って
中国出身/ 2012 年4月来日
大阪大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程 2年在学中
趣味:料理
将来の夢:料理のできる実践的な研究者
研究テーマ:発達的視点を取り入れた非行少年の治療教育について
 
 

なぜか留学生グループに入ることに少し抵抗感があり、今まで研究室の人としかほとんど付き合ってこなかった。しかし今年5月から、留学生のいろんなサークルに入るチャンスがあり、勇気を振り絞ってチャレンジした。そこで出会った人の中に、目標を持ってしっかりと頑張る人もいれば、あまり自分の専門に誇りを持てず目標もよくわからない人もいる。そういう人は、外見ではそんなに変わらないが、中身は恐らくとても苦しんでいると思う。

卓球サークルのネットグループに入って、いつも活動時間と噛み合わないこともあって全然実際に参加したことがなかったが、この前やる時間があった。そのとき、二人しか集まってなく、その人と簡単な挨拶と自己紹介をして、黙々とやり始めた。それがちょっと楽しくないなぁと思って話しかけた。

 
私: 「今は何年生ですか?専門は何ですか?」
彼は少し恥ずかしがりながら、「法学部で、M1です」と言った。
私: 「良いですね!」
ちょっと“誤解されているんちゃうか”というような顔をして彼は言った:
「法学理論です。弁護士とかじゃないです」
私: 「めっちゃ面白そうじゃん」
彼は驚いた表情になった。
私: 「法の理論は面白いですね。例えば、少年非行犯罪の場合なぜ刑が軽いのか?どういう風に考えられてきたのかめっちゃ知りたいんですけど、そう思いません?」
彼: 「そうですね。でもそれは難しい質問ですね。みんなに満足してもらえるような案を出すのが難しいです」
私: 「誰も案を出してとは言っていないですよ。今まで少年犯罪をどう考えてきたのか、それのどこがいいのかどこが悪いのか、今は発達の研究もだいぶ進んできているので、これからどう考えていくべきかとか、そういうのをしっかり整理できたら絶対面白いし役に立ちますよ。案をどうするかは他の人の判断です」
私: 「誰も案を出してとは言っていないですよ。今まで少年犯罪をどう考えてきたのか、それのどこがいいのかどこが悪いのか、今は発達の研究もだいぶ進んできているので、これからどう考えていくべきかとか、そういうのをしっかり整理できたら絶対面白いし役に立ちますよ。案をどうするかは他の人の判断です」
彼: 「おー、なるほど。ちょっと難しい…」
私: 「それと、死刑に対する議論も最近話題になっているじゃん。『人権』の意味が変わってきて、『刑罰』の意味ももしかしたら再考する必要があるかもしれません。こういうのも面白いと思いますけどねぇ」
彼: 「そうですね。でも、難しいけどね」
 

正直に一瞬つまらない人だなぁと思った。これ以上専門に関することを話すこともなかったが、後にこのことについて振り返ると、彼自身が一番つまらなく感じているのではないかと思った。留学とは、一体何のためだろうか。留学の意味は何だろうか。留学する前にちゃんと考えるべきかもしれない。

ちょうど最近SNSである文章を読んだ。カリフォルニア大学学長田長リンさんはアメリカにいる中国人留学生に2つの言葉を残したそうである。一つは、「Be an American」だ。アメリカに来た以上、アメリカの文化を勉強し、アメリカの経済・政治・歴史・社会について知るべきである。が、これはさほど簡単なことではなく、多くの留学生は、アメリカにいながら中国語で喋り、中国のテレビしか見ず、中国人としか付き合わず、中国のサイトしか読まないでいる。でも、ただのアメリカ人になったら、“BANANA”になる −− 中身は白いけど外側は黄色い。そこで、もう一つは、「Be a Chinese」だ。いつまでも中国文化を忘れず、中国人であることを忘れないことも大事である −− 。帰国にせよアメリカに残るのにせよ、中国人留学生の最後の価値は、中国人である、ことにあるというのだ。

なるほどと思った。自分は“BANANA”になっていたのだ。2012年4月から日本に来て、そこから3年間ずっと日本人としか(ほぼ)関わらず、日本のテレビを見、日本についていっぱい知ろうとした。外国人になりきるということは自分にとって一回自分を閉じた、という感覚であった。今年5月九州へ一人旅に出るなどして、もう一回自分を開こうと、いろいろと留学生サークルやイベントに参加し始め、留学生であるからこその共感はまだ少ないが、実家中国の話をすると共感するところが多く、そういう開けた感じが意外と楽しく良き経験となった。4年目は“BANANA”から変わろうとしている年だ。“マンゴー”がいいかなぁ。

 
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