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新社会人の所懐
ドイツ出身/ 2008年10月来日
趣味:漢字学習、外国語学習、サッカー
将来の夢:国際社会の発展に貢献すること
現在の職業:宣伝業務(北米・南米における媒体購買)
 
 

2014年4月1日、私が長い間持っていた一つの夢がうつつとなりました。その夢とは、凡そ十年という期間に亙って蓄えてきた日本語と日本についての知識を日本の会社で活かし、その仕事を通じて、日本で長期的に生活していくために必要な基盤を作り上げることでした。その目標は私が今の勤め先への入社で達成することができました。そうして人生で初めて、自ら稼いだお金で生計を立てることになりました。このように目標が計画どおりに実現できたことは非常に嬉しいことであり、入社が決まった際、私はもちろん大喜びしました。そして、数箇月、半年と時間が経ち、私は仕事で苦い経験を多く積みながらも或る種の満足感を実に得ていました。しかし、入社から約一年半が経った最近となって、意外な「悩み」が現れてきました。

その「悩み」とは何か。それは、実は生活環境の変化と深く関わるものです。大学時代は時間に自由があったため、興味のあるすべての勉強と研究を存分に追究することが許されていました。文学のことであれ、言語学のことであれ、外国語学習のことであれ、知りたいことがあればいつでもその解明に耽る余裕がありました。その一方で、今は仕事が生活の中心となっています。日々の業務内容の濃淡、残業時間の多少があるとはいえ、一日の大部分は会社で過ごし、帰宅後に少し暇があっても、「疲れからの暇」というものはありません。そのため、自由時間のほとんどを疲労の解消に費やしてしまい、趣味や好きなことにかけられる時間が必然的に少なくなってしまったのです。

では、趣味や興味にかけられる時間が少なくなっていることだけが最近の「悩み」のすべてかといいますと、そうでもありません。誠に困ったことに私が興味を持つ事柄の数が大きく増えてしまっています。以前は概ね文学、言語学、外国語学習の範疇内であった関心が、今や近現代史、政治史、思想史などにまで幅を広げているのです。それは社会人になり、社会全体を俯瞰したい、という自らのニーズを感じるようになったせいかもしれません。

つまり、私の「悩み」の本質をここで纏めてみますと、社会人になり、趣味や関心事が増えてしまった反面、それらを追求するために必要な時間が大いにとりにくくなってしまっている、ということす。これが私の最近の「悩み」なのです。

では、この「悩み」はどう解決すべきでしょうか。これもまた難題です。今のところ思い浮かぶ方法は二つです。一つ目は、現状の限られた時間で興味のあるテーマを順次に、一つ一つ少しずつ勉強していくことです。この方法のメリットは今のライフスタイルに合っていることですが、デメリットはそれが長期的な計画になってしまうことです。二つ目の考えられる方法は、一時的に大学に戻ることです。そうした場合のメリットは時間に大いに余裕ができることです。一方、デメリットは生活の不安定化という極めて重いものです。仕事との両立が難しいと思われるこの方法では、一時的休職が避けられず、収入不足や将来への不安が大きな負の要素となってしまうのです。

しかしながらよく考えてみれば、以上のいずれ片方を選んでみたとしても納得のいかない部分が残ることは必至です。そのため結局は、もうしばらく考えてみるしかないでしょう。ただ、いま現在確実に言えるのは、「大学時代にもっと勉強しておけばよかった」と、今さら後悔している私がいることです。勉強を最優先すべくサークルにも参加せずに大学生活を過ごした私が今このように「もっと勉強すればよかった」と後悔するなんて、このイロニーと言ったらありません。長年求めてきていた「満足の種」が終に掌に載っていることを喜んでいたら、満腹感が期待していたほどのものではなかった、という話は一種の面白おかしさも帯びているようにも思えます。最終的にはドイツでよく耳にする諺(?)、「Der Weg ist das Ziel(途こそ目的地なり)」が本当だったかもしれません。人生には目的地なんかない、あるのは途だけ…。

 
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