私は子供の頃に人生には次の3つの段階があると聞きました。時間と活力はあるがお金が無いTEENAGE、活力とお金はあるが時間がないWORKING AGE、そしてお金と時間はあるが活力が無いOLD AGEです。私の研究者としての人生設計も、この3 つに分けて考えています。
TEENAGEでは、私は可能な限り色々な地域をまわり、多くの人々との出会いを通して、多くの知識・文化・言語そして科学技術を学びたいと思っていました。私の故郷であるベトナムでこのような機会を得るのは難しいので、私は日本で学ぶ決意をしました。広島大学では日本人学生はもちろん、様々な国々からの留学生と日本語や英語でディスカッションを重ねることで、物事を多角的にとらえて解決方法を探す力を身に着けてきました。さらに、私が所属している研究室では、分子生物学的手法や微量分析手法を習得する機会があります。そこでWORKING AGEではそれを活用し、大学機関で環境保全科学と放射線災害に関する研究に打ち込みたいと考えています。
また、研究活動を通じた教育を学生に行うことも大切だと思っています。OLD AGEでは、私は子供が科学を学ぶことができる施設を作り、彼らが科学技術を学ぶ支援をしたいと考えています。ベトナムでは、親から子へ正しい知識があまり教えられません。そのため、知っていれば少しの注意で避けられることで病気になったり命を落としたりしています。私もこの人生を科学技術の発展と子供の安全で安心な生活に捧げたいと思っています。
3年前に環境保全工学の博士を取得しました。現在は環境保全の研究をしながら、広島大学大学院リーディングプログラムの「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」に所属し、災害復興を中心に研究を行っています。この研究の動機は、私が災害を体験したことにあります。私の地元は天災が多く、また、2年前には熊本で発生した大地震のため、避難所での生活を体験しました。避難所ではお年寄りの方々に、給水やトイレ等に使う水を運ぶなどの支援を行いました。さらに、日本に来たばかりのベトナム実習生達には災害状況を説明し、避難所へ案内するなどの支援を行い、また、避難所にいる日本人とコミュニケーションを取る方法を教えました。しかし、災害状態がいつまで続くのか、災害後彼らの生活や仕事がどうなるのかについて詳細に答えられず、自らの力不足を感じたため、災害復興について勉強しようと思いました。
今回の「平成30年7月豪雨」では、災害復興について学んだ知識を基に、在日ベトナム人らに情報や災害対策知識を提供しました。災害時には、緊急のお知らせが携帯電話に入りますが、「書いてあることがよく分からない」とベトナム人留学生や技能実習生から聞きました。そのため、少しでも皆の命が助かるように一生懸命情報を収集し、翻訳を行い彼らに素早く提供できるように行動しました。災害発生後、断水や食料品の不足のため、慣れない生活や言語環境ということもあり、多くの外国人が混乱していました。そのような状況にある彼らの力になりたいと考え、私は東広島市教育文化振興事業団のコミュニケーションコーナーや、ひろしま国際センターで、災害関連情報の翻訳・伝達や、相談窓口でベトナム語や英語の通訳を行うなどのボランティア活動を行いました。今回の災害で、身近には被害を受けた人はいませんでしたが、復興推進、将来の災害に対する予防にもなるので災害関連の情報を丁寧に翻訳するように努めました。災害について引き続き勉強を続け、多くの人々の役に立つことができるような人物になりたいと思います。
|