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奨学生エッセイ
 
 
 
来日してからの人生を振り返って思ったこと
中国出身/2012年10月
東京工業大学 物質理工学院 修士2年在学中
趣味:小説創作、旅行
将来の夢:省エネ事業に貢献する・小説を一冊出版する
研究テーマ:人の指先における摩擦現象の解明
 
 

大学生としての最後の1年を迎え、就職活動を無事終えて来年からも引き続き日本で暮らしていくことになりました。就職活動中はいろいろな国から集まってきた留学生に出会い、また社会人の方と交流するチャンスもたくさんありました。毎日忙しくて大変でしたが、これまでの人生を振り返ながら将来をしっかり考えることができるようにかなり成長しました。

長期留学を目的として最初に日本に来たのは、18歳の秋でした。それまでは学校の講義で日本語を6年間勉強していましたが、生活する分には想像以上に困ることが多くありました。初めて電気代を払いにコンビニに行ったとき、何を言えばいいのかすらわかりませんでした。そこで店員さんに親切に教えてもらって、「お願いします」という教科書には載っていない便利な言葉を覚えました。

一人暮らしをしていく上で、自炊することも大きな課題でした。ふるさとの料理が懐かしくなったとき、インターネットで検索すればレシピは簡単に入手できますが、母国語でしか名前が記載されていない食材をスーパーで探すのは意外に難しかったです。かつて香辛料のクミンシードがほしかったとき、100種類くらいの品物が置いてあるスパイスエリアに立ち寄りながらカタカナのスパイス名を一つ一つ検索した覚えがあります。また、最初の頃、外見で野菜を区別することができなかった場合、ラベルを読んで頭の隅にある単語帳から中国語訳を引っ張り出してはじめてひらめいた経験があります。ささやかなことが山ほどあって苦戦していたのですが、今思うとつい笑ってしまう面白い出来事にすぎません。その結果、料理が上手になったのはともかく、いつの間にか日本での生活全般に慣れてきました。

3年前に参加した留学生向けの講演では、「個性を残しておいて、無理して日本人の真似をしなくて大丈夫だよ」というアドバイスを頂きました。就職活動中でも、「ありのままの姿でいて、留学生ならではの価値を発揮してください」という言葉を耳にしたことがあります。国籍の違いによる差別化がないことには、心より感謝致しますが、今までの経験を振り返ると、日本社会において日本人の価値観に合わせて生活になじんでいくことは、大変なことでも嫌なことでもなく、自分を成長させる楽しいことだと考えます。生まれ育った環境とは違うかもしれませんが、若い年から頑張って周りの環境に適応していくことには多大な達成感があるといえます。これからはもちろん自分自身に適したポジションを探して最大限の力を発揮していくつもりですが、この社会の規則に合うような将来像に自分を育てていく権利も残させていただきたいです。

最近研究室には中国人の後輩が新しく入ってきました。彼にとって今は、講義の内容が100%理解できず、日本人学生とうまく交流できなくて飲み会などの場でも自由に楽しめないといった、私にも一度経験したことのある課題に直面する時期だそうです。たまには困っているところをまるごとカバーしてあげたくなるのですが、今までの経験を思い出して結局控えたこともあります。なぜなら、日本社会という狭い意味だけでなく、大人の社会に向けて頑張っていた記憶を彼本人にも残してあげたいからです。

日常生活をはじめ、文化や習慣の違いまで平気で受け入れられるようになったのは、決して自力だけで頑張ってきたわけではないです。言葉を教えてくれたコンビニの店員さんをはじめ、学内、学外で出会った様々な人がいなければ、今の自分は存在しないと思います。したがって、これからも、常に向上心を持ちながら、学生時代の終わりを迎え、立派な社会人になるように頑張っていきたいです。

 
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