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変わって行く日常生活の発見
グアム(アメリカ)出身/ 2016年9月来日
名古屋大学大学院 人文学研究科 博士後期課程2年在学中
趣味:音楽、レコード、ライブ
将来の夢:先生
研究テーマ:沖縄におけるドキュメンタリー映画
 
 

グアム出身の僕は日本に来ていつも新しい場所を発見することを楽しみにしています。でもグアムは小さい島なのであまりそういう経験ができません。どの海岸でも行ったことがあり、どのレストランでも食べたこともあるんです。何を注文したかも覚えていて、観光スポットにもほとんど行ったことがあります。でも、日本に来て、近所を探検し終わっても次の町も隣の市も県にも行って探検できるんです。そこにはきれいな風景も商店街も名物も方言も山ほどあるんです。他の国から来た留学生はこんなことは普通のことでしょう。グアムという小さな島国から来た僕にとっては非常に魅力的なことなのです。

今は憧れの旅行・トラベルはもう過去のことのようになったとも言えるでしょう。旅行もイベントも消えてしまい、その日常の生活から脱出できる素晴らしい気持ちなどは昔の思い出となっています。最近の自粛生活ではコンビニで缶コーヒーを買いに行くことや郵便局へ行くことさえ「旅行」のようにわくわくしたレベルの出来事へと変化したと言ってもいいぐらいです。

遠くへ旅に出ることは残念ながらしばらくできませんが、出掛けることと共にあった楽しい発見の可能性は必ずしもなくなったわけでもないでしょう。実際のところ、一番僕にとって楽しい発見は自分の住んでいる町の中でよくあったからです。例えば街の中の小さな店やおもしろい公園。隣の駅にある町。通ったことがない家の近くの道。それにお気に入りの桜が見える隠れ花見スポット。世界で一番おいしかったコロッケ屋さんなども。日本人の友達も「こういうのはずっと家に近くにあったんだ?!」と驚いた様子で話すのを聞いたこともよくあります。

もちろんできれば外へは行かないほうがいいんですが、最近ずっと家にこもっていて落ち込みそうになった時など、遠くへ行かなくても、「脱出」「息抜き」「発見」は近所や家の近くでもきっと見つけられるはずです。電車に乗るんじゃなく、自分の足であっちこっち行ったりしたらリフレッシュできるし、日常気がつかなかった風景も楽しめるし。自分が住んでいる町の魅力を発見できることでしょう。運動の大切さは変わっていないので近所や近くの公園でジョギングするのもいいでしょう。

出掛けるのはちょっと不安もあり無理な時もあります。近所にも興味がなくなることもあります。こういう時でも、平凡な生活の中に発見があると思います。前は急いでコーヒーや朝ごはんを用意したが今はゆっくり、ぜいたくに時間を使ってできる楽しいことになっていませんか。音楽を流す時間もいっぱいあって幸せになれませんか。また、実際に街中で「探検」ができない時には映画などを見ることができませんか。田舎の町を訪ねるテレビドキュメンタリーや、サラリーマンが休日東京の小さな町へ行くテレビドラマなど。このように探検は失なわれていません。形が変わっただけなのです。家で映画を見ること、今まで日常生活であまり注意を払わなかったことに注意をむけてみること、忙しくてできなかったことができるようになったことなどは、探検のようで最近の不安になりがちな毎日にはものすごく重要だと思うのです。時間がたっぷりあることは私たち現代人にとっては感謝の一言じゃないでしょうか。ずっと家にいるので色んな新しいことを発見できます。それに、住んでいるアパート、近所とかをもっとよく知るきっかけとなり、好きになるきっかけとなるからです。

また、ローカルスポット、例えば街角の弁当屋さんやずっと前から経営しているカフェなど今は特にサポートが必要です。電車に乗らなくて行けるので、自分たちへのサポートにもなっています。留学生の僕たちにローカルを支える必要はないと思われるかもしれません。また、大したサポートはできないかもしれません。自炊に飽きたら、街角の弁当屋さん、コンビニの缶コーヒーを飲み飽きたら、カフェでゆっくり美味しいコーヒーを楽しむことがささやかなサポートになるかもしれません。

些細なことのようですが、留学生の生活や研究などにもとても大事だと思うのです。周りの環境が心地よくなければ、研究や勉強が思ったように進まないことが多いのです。最初の一歩は失った探検の場を日常生活の中に見つけることだと思います。すると、今までとは違った生活の楽しみ方、また、忙しくて失われてしまった楽しみも取り戻せたといううれしい発見などがあるかもしれません。これからどうなるのか時々とても不安になりますが、感謝することもあります。その一つは、こういう状況にならなかったら、こういうふうに自分が気づかなかったこと、この発見が生まれなかったと思うからです。

 
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