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アイデンティティの「再構築」
モンゴル出身/2020年11月来日
北海道大学 現代日本学プログラム課程 4年在学中
趣味:音楽を聴く、ビデオゲームでの遊び
将来の夢:教授になりたい
研究テーマ:国際関係、近代日本政治学
 
 

私はモンゴルで育ち、2020 年に大学を始めるために初めて国外に出た。それまでは国外に出た事はほとんどなかったため、楽しみにした事だった。しかし、母国を離れた事とモンゴルでの生活を振り返った事でアイデンティティ崩壊に陥るとは思ってもみなかった。より発展した日本での生活を続けるうちに、自分の育った環境がどれほど異なり、後進国のものであったかを理解するようになった。私の経験は私にとっては普通のことだったが、他人たちには驚きだった。人と話し合いを通じて、私はロシア中等教育とスラブの教師や同級生によってある程度影響を受けていた事に気付いた。それ以来、自分が文化的にスラブとモンゴルの両方に属していることが明確になった。

2000 年代初頭、モンゴルは民主主義国家と自由市場経済への移行に適応していた。両親や年配の方々によれば、その当時と現在の社会は全く異なっている。例えば、ソ連の崩壊直後、モンゴルの経済は困難に直面した。これと比較すると現在のモンゴルは進化を遂げ、民族としても伸ばしたと思う。したがって、このような利点と数多くの欠点を持つ国に生まれたことは私の長所だと思う。来日後、モンゴルの欠点と利点を明確に理解できた。例えば、経済的には、モンゴルは日本や韓国のような発展したアジアの国々と競争できるほど強くはない。しかし、この不利な状況が私をさらに奮い立たせ、いつか母国を発展途上国のレベルに引き上げ、あるいは社会を正しい方向に導く手助けをできるようにしたいと考えている。母国民が他のアジア諸国が達成した偉業に到達できると信じており、私たちはまだ始まったばかりである。この観点は私の愛国心と希望を育み、21 世紀のモンゴル人としてのアイデンティティを深めるのに役立った。

一方で、幼少期から高校卒業までロシアの教育を受けたことについて触れたいと思う。両親は姉のロシア教育と違う「西洋の教育」を受けさせようと、国際化が進む学校に入れようとしていた。私の子供っぽさと頑固さのおかげで、最終的には姉と同じ中等学校に入学できた。年を重ね、ロシア語のスキルが向上するにつれて、スラブ文化と歴史に興味を持つようになった。さらに、ロシア人の中で孤立したコミュニティにいるため、住んだこともない、訪れたこともない国に対して愛と尊敬の気持ちを抱くようになった。これは振り返ってみると、どれほど宣伝が効果的であったかを理解した。高校の最終学年まで、私はプーチン大統領の熱心な支持者であり、ロシアで進学するべきだと信じていた。幸いに、お母さんのおかげでこの計画は実現しなかった。お母さんは、私が出身国でもない国の宣伝に巻き込まれ、過去の逆行した理想に頼る政治家を支持するようになっているのを見て取ったのだろう。お母さんの反対に従い、最終的に韓国や日本の学校に出願した。私はその時、お母さんに対して不満と恨みを抱いていたが、宣伝から解放された後、お母さんに感謝し、以前の感情を深く後悔した。

ただし、明確に言いたいのは、宣伝から逃げているのであって、スラブ文化に恨みを抱いるわけではない。現在に至るまで、ボルシチやピロシキなどのスラブ伝統料理を楽しむのは喜びの一つである。スラブの歴史や文化を学ぶことは、自分の興味であり、現在の地政学的状況を理解するためにも必要である。特には、ウクライナの現状や他のスラブ諸国が直面している問題を理解することが重要である。歴史は複雑であり、ウクライナの主権国家の民主主義を脅かす「特別軍事作戦」を正当化するためにプーチン大統領が持ち出した「事実」を支持する根拠はない。多くの考察を経て、スラブ文化への愛がクレムリンによって行われた残虐行為への強い反対と共存できるという結論に達した。

自己発見の道を歩んでいる中で、いくつかの疑問に対する答えを見つけたのは幸いだと感じている。母国を離れて初めてモンゴルへの愛を再発見したことは後悔すべきことであるが、それは欠点ではないと思う。母国を外部からの視点で見ることで、利点や欠点を含めて母国を愛することができた。さらに、日本に移ることで、自分の環境がいかに孤立していたかを理解し、解放できた。これは新鮮な視点の変化であり、この機会に感謝している。この経験は研究に大いに役立ち、虚心な者になる手助けをしてくれた。


お母さんと私(2005年頃)

 
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