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日本の小説と私
中国出身/2022年11月来日
東京工業大学大学院 情報理工学院 情報工学 修士2年在学中
趣味:ランニング
将来の夢:自分の研究を活用して社会に貢献する
研究テーマ:高感度加速度センサーによる頸動脈狭窄検出
 
 

中学時代に日本の小説を読み始めました。これまで長い時間が経ち、振り返ってみると、日本の小説が私にさまざまな影響を与えたことを感じます。私は日本文学について専門的な知識を持っているわけではありませんが、読後の感想や自身についてお話ししたいと思います。 

私が読んだ日本の小説の中で、最初に感じたのは「美」でした。例えば川端康成の『雪国』など、これらの物語は自然を背景にして登場人物の運命や感情を描いています。自然環境が物語の背景として美の舞台を提供し、登場人物やプロットが逆に自然の美に命を吹き込むことで、自然の美を追求するようになりました。今、日本に来て北海道の白い大地や富士山の下の輝く湖面など、多くの自然景観を楽しむ機会に恵まれたことは幸運です。これらの景色は、読書時の感動を再び呼び覚ましました。広大で美しい世界の中で、小さな自分が生きていることに感謝し、この美しさをずっと見続けたいと思います。

しかし、自然の美しさだけでなく、現実生活には負の感情も避けられません。成長の過程で抱いた多くの疑問が日本の小説を通じて解消されました。成長は増加だけでなく、喪失も伴います。現実を知れば知るほど、自分の限界を感じ、迷うこともあります。日本の小説は、この迷いを解消する助けとなりました。問題の克服や解決方法を教えるのではなく、微妙な感情を正確に捉えて表現しています。例えば『山月記』や『金閣寺』では、自尊心と劣等感、向上心と怠惰の矛盾が描かれています。積極的な感情だけを語っても人は積極的にはなれず、消極的な心理の存在を認識することで初めて、自分の消極的な心理に向き合うことができるのです。その結果、自分の矛盾した心理を理解し、消極的な感情を直視するようになり、もはやそのことで迷うことはありません。

最後に、生活習慣の変化についてです。村上春樹の多くの作品は、現実と非現実の異界を結びつけています。読むことで奇妙な旅を体験しているようで、非常に興味深いです。読んだ後、実際にはさまざまな隠喩を完全に理解することはできませんでしたが、確かにランニングの習慣が身につきました。村上春樹自身がランニングを続け、その考えを『走ることについて語るときに僕の語ること』という本にまとめています。この本は、ランニングがどのように健康に良いかや、意志を強くするかを説いているわけではありません。最も感動したのは、苦難の描写であり、「痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル」という言葉です。ランニング中の苦労は適度で選択できる苦難です。現実は順風満帆ではなく、受動的に苦難を迎えようとすることや、苦難を避けようとすることは不可能であり、ただ受動的な態度によってより苦痛を感じるだけです。しかし、ランニング習慣を通じて自発的に苦難を選び、克服することで、自分自身の人生を自分で掌握していると強く感じます。困難な状況にあっても、ランニング目標を達成することで自信を得て、より大きな困難にも立ち向かうことができます。

日本の小説は、私に以上のような感情と影響を与え、日本への憧れから留学に至りました。この影響は今後も私の人生に続くでしょう。これからも日本の小説を読み続けたいと思います。


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