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人の力
中国・内モンゴル自治区出身/2023年4月来日
東京大学大学院 経済学研究科 マネジメント 修士2年在学中
趣味:バレーボール、旅行とSF映画
将来の夢:猫を飼うこと
研究テーマ:eWOMの内容に基づく有効性予測モデル
 
 

中学校の生物の授業で、先生に「人と他の動物の違い」について尋ねたことがある。当時の答えは、「人は道具を使える」、「火を使って食べ物を加熱できる」というものだった。しかし、最近私は違った考えを抱くようになってきた。それは、道具の使用にとどまらず、リスクを避ける動物の本能を超える力こそが、人と動物を分ける最も大きな違いではないかということだ。

この考えを深めるきっかけとなったのは、先月に蘇州で起きた事件だった。中国の蘇州市で、日本人学校の送迎バスのバス停において、刃物を持った男が日本人女性とその子供を襲った。乗務していた女性スタッフ、胡友平さんは、男を拘束しようとして重傷を負い、病院に搬送されたものの翌日亡くなった。幸いにも、襲われた母子は負傷はしたものの、命に別状はなかった。

このような突然の事件では、多くの人が恐怖に駆られ、逃げ出すのが普通だ。しかし、胡さんはその名前の通り、友好的で平和を守るヒーローのように、身を挺して被害を防いだのだ。ニュースを見た後、胡さんについて少し調べてみた。まもなく定年を迎え、趣味が多く、楽しそうな人生を送っていたらしい。被害を防いだとき、胡さんは何を考えていたのだろうか。「避けたら生き延びられる」とか、「日本人だから別に」というような考えはおそらくなかっただろう。ただ、子供を守りたい、危険を見たら手助けしなければならないというシンプルな思いで行動したのだ。

このような自己犠牲の精神は歴史の中でも頻繁に見られる。例えば、第二次世界大戦中には、ドイツ人実業家オスカー・シンドラーが命の危険を冒してユダヤ人を救い出した。彼はエマリアと呼ばれる工場を設立し、約1,200 人のユダヤ人を強制労働から守った。シンドラーは政府の目に留まり、三度も逮捕されたが、それにも屈せず、彼の勇気と行動が多くの命を救ったのだ。彼が自身の安全を顧みず、多くの命を守ろうとしたその行動は、まさに人間の本能を超える力の証である。

また、現代でも自己犠牲の例は少なくない。例えば、交通事故の現場では、多くの通行人が迅速に救助活動を行い、負傷者を助ける。彼らは自分の安全を顧みず、他人を助けるために行動している。また、火災現場では、隣人が火事になった家に飛び込んで救助することもある。2008年の中国四川省大地震では、小学校の先生が自分の体で4 人の生徒を守ったという話も今でも鮮明に覚えている。このような例は数多くあり、日常の中で見過ごされがちだが、実際には人間の本質を表す重要な行動である。

さらにこのような行動は日常の場面でも見られる。例えば、通勤途中の電車の中で、他の乗客のために席を譲る人や、重い荷物を持つ人を手助けする人がいる。学校でも、仲間のために自分の時間を割いて助ける姿が見られる。これらの行動は小さなものであっても、人間の本能を超える力を示している。

こうした自己犠牲の行動は誰も予測できないし、人の本能からくるものだろう。こうして、自分より他人を考え、命を優先する本能があるからこそ、人は人として呼ばれるのだ。長い歴史の中で、人々はお互いに支え合い、生き残ってきた。私たちは、この人間特有の力によって奇跡を生み出し、未知の未来という大きな壁を乗り越える。

 
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