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ふるさとのかたち
台湾出身/2022年3月来日
早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 修士卒業
趣味:三味線、尺八、散歩
将来の夢:就農
現在の職業:国際交流関係
 
 

ご無沙汰しております。約二年ぶりの寄稿となりますが、少しワクワクしながらこの文章を書いています。

最近、新たに来日した外国人の方とお会いする機会が ありました。私の友人がその方に「日本に来たきっかけは 何ですか」と声をかけたとき、不意に、私自身が初めて日 本に来た理由が思い浮かびました。

私が日本を選んだのは、「日本が好きだから」という、ある意味とても単純な理由でした。ただし、アニメやJ-POP、アイドルといった「見える日本」に惹かれたわけではありません。私を引きつけたのは、日本という国に内在する習慣や雰囲気、つまり「感じる日本」でした。たとえば、人と人とのちょうどよい距離感や相手を思いやる道徳観、そして歴史や地域に共通する記憶を大切にする文化的な姿勢などです。そうした価値観の積み重ねこそが、この国を他とは異なる、魅力的な場所にしているのだと感じたのです。

かつては東京で留学生活を送り、その後、一度帰国して就職しましたが、やはり日本が好きだという思いは変わらず、再び日本で働くことを決意しました。幸いなことに良いご縁に恵まれ、スムーズに転職することができ、現在は地方都市で暮らしています。台湾の首都圏で育った私にとって、自然に囲まれ、時間がゆったりと流れるようなこの環境には、最初こそ戸惑いもありましたが、次第に深く魅了されていきました。そして将来的には、この地で農業を営みながら暮らしていきたいと考えるようになりました。

最近では、方言を学んだり、地元のお祭りに参加したり、ご当地グルメを楽しんだりする機会が増えてきました。外国人としてもちろん母国の料理が恋しくなることもありますが、そんなときにはインターネットでレシピを探し、ご当地の食材を使いながら、記憶の中にある味を思い出して何度も試行錯誤を重ね、ようやく納得のいく味にたどり着いたこともあります。

こうした地域での暮らしのなかで、小さな創意工夫を加えながら日々を重ねていくことによって、地域への敬意と、自分自身の文化的な色合いとを無理なく調和させることができるようになりました。そうして少しずつ、この土地に溶け込み、自然体で暮らせるようになってきたことを実感しています。

地方に移住した人の中には、「住めば都」という言葉の通り、「〇〇が私の第二のふるさとになった」と語る方も少なくありません。その意味は人それぞれですが、私にとっては、「心から好きだと思える場所こそ、本当のふるさとになる」と感じています。つまり、生まれ育った場所だけがふるさとではなく、愛着と安心感を抱ける場所も、私なりの「都」になりました。

そして私の「都」は、地図の上に記されたどこか一つの都市を指すものではありません。そこに実際に暮らしているかどうかにかかわらず、日本各地の暮らしのなかに静かに根ざした文化や、時の流れとともに息づいてきた価値観の数々に、私は知らぬ間に魅了されていました。今の生活のなかで、それらが自分にとってかけがえのない「都」であったのだと、胸の奥で静かに悟ったのです。

これからは、外国人でありながら地域住民でもあるという立場から、この地域に根づく風土や文化、独自の取り組みを幅広く理解し、心の面でも「地元の一員」となれるよう、学びと実践を重ねていきたいと思います。

 
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