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零細小売業問題についての思索
韓国出身/2015年9月来日
神戸大学 経済学部3年在学中
趣味:映画観覧、美味しいお店探し
将来の夢:どのような環境の下でも恐れず挑戦する強い意志を持った社会人
 
 

最近私は、私が住んでいる寮の前にある零細な商店を利用しながら、零細小売業問題に関心を持つようになった。寮は、敷地内でイノシシもよく見かけるほど少し山に入ったところにあり、周りには大規模店舗と呼ばれる商店がないため、買い物をするには寮の前の小さな商店に行くしかない。初めてその商店に行った際、私が探していた商品もなく、しかも置かれている商品の数さえ少なかったため、不便だと感じた。だが皮肉にも、時間が経つとともに、今まで利用してきた大規模店舗では感じられなかったその不便さが逆に新鮮で、オーナーさんの対面接客を通じた信頼関係の構築といった小さな商店ならではの
利点も見つけることもできた。

しかし、このような零細小売業は、百貨店に始まる大規模店舗がスーパーマーケット、コンビニなどの様々な業態に分化・発展するとともに、衰退の一途を辿っているのが現状である。経済産業省中小企業庁の「中小小売業・サービス業及び商店街の現状について」という資料によると、1991年から2014年までの23年間で零細小売商店と呼ばれる「1〜2人」と「3〜4人」の事業所の数が半分になったそうである。こうした状況で、零細小売業が今後存続・成長していくためには、何をすべきであろうか。この問題に対し、今回のエッセイでは品揃え、立地、接客及びサービスの3つの側面から、自分なりの考えを述べていきたいと思う。

まず、品揃えの側面からみると、零細小売業は大規模小売業とは異なり、売場の面積が狭いため、小売業のアウトプットである品揃えの狭さに問題がある。例えば、メディアで宣伝している商品が売場にないため、お客のニーズに応じることができなく、お客が減ってしまう場合がある。品揃えの広さで大型小売業と競争することは、事業体の面積とアウトプットが異なるため無謀である。この場合、対策として専門店化が考えられる。要するに、商品ラインを絞り込み、大型小売業との差別化を狙うのである。メディアで紹介されるほどの特色のあるパン屋・小売店は、開店後1時間で売り切れることも珍しくない。このように、品揃えの広さより深さに集中し、自分の分野においては大型小売業に負けない品揃えで生き残れるだろう。

次に、店舗立地は小売業にとって最も重要な要素であり、その位置に基づいて商圏の範囲が決まる。しかし、小売競争の特質上、その競争範囲は地域の商圏に限られるため、その狭い商圏においても零細小売業の影響力は大型小売業の勢いに押されて更に低くなっているのが事実である。特に、品揃えの浅くて狭い零細小売業において、コンビニは不愉快な存在である。このような場合、インターネットを活用することで、地域という商圏から離れて全国を商圏に設定することが対策として考えられる。これにより、1店舗しかない零細小売店と全国展開している大型小売店における商圏の格差が解消できるだろう。しかし、同じ商圏という条件の下では、上述の品揃えの問題が再び浮上する。この状況を打開するためには、たとえば地域の特産品や独自開発または発掘した商品をインターネットで販売する品揃えのように、大型小売店が取り扱っていないものを販売するか、或いは上述した通り、品揃えの深さに集中するかという戦略が必要となるだろう。また、もう一つの方法として、もし考察対象である零細小売業の品揃えが深いならば、異なる商圏に出店することも考えられる。つまり、既存店舗と競合しない商圏に同じ小売商品・サービスを提供することで、顧客を更に確保できると考える。

最後に、サービスと接客の側面からみると、零細小売店は大型小売店とは異なり、お店のオーナーがお客と対面してサービスを提供したり、商品を販売することが可能である。また、お客にコーヒーのような飲み物を提供するなどの付加サービスを提供することで、容易に地域の消費者との強固な関係を築ける。通常の大型小売店はセルフ方式を採用しているため、このところに対しては零細小売業が優位を占めているといえるだろう。もう一つの利点として、素早い対応が挙げられる。大型小売店の場合、本部からの指示がない限り、内部インテリアや陳列する商品などを変えない。しかし、零細小売店の場合、継続的に内部インテリアを、ひいては陳列する商品ラインを自由自在に変えることができる。ということは、地域の消費者のニーズに敏感に反応することができるということである。したがって、零細小売業者は常に顧客のニーズを把握するため努力し、それに応じて素早く反応しなければならない。また、零細小売業者は、サービスと接客における利点を最大限に活かさなければならない。

上の三つの観点からみると、零細小売業が生き残るためには、品揃えの深さが前提条件となる。品揃えが魅了的ではないと、そもそも顧客からの関心を集めることはできないからである。従って、これからは零細小売業の業態の中でも「専門店」が生き残るのではないであろうかと考える。しかし、単に専門店であるからといって、品揃えが魅力的であるからといって、生き残ることはできない。零細小売業の特質上、商圏が狭く、その中でも専門店はある商品ラインに絞り込んで商売をしているから、特定の消費者を対象として商売をすることになり、商圏内におけるターゲット消費者の範囲は更に狭くなる。ということは、零細小売業者が自分の商圏にこだわると、改善の余地がないということである。したがって、こういった問題に取り組もうとする意志とその意思を貫く姿勢や実践力が重要であり、ネットの利用および他の商圏への拡張と、大規模店舗ではできない対面接客を通じてお客との信頼関係を築くなどといった自分の利点をよく把握し、それらを強化する方向に向かっていくと存続・成長していけるのではないのであろうかと考える。

 
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