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奨学生エッセイ
 
 
 
なつを迎えることとは。
韓国出身/2014年4月来日
慶応大学大学院 法学研究科 博士3年
趣味:映画鑑賞
将来の夢:研究者
研究テーマ:現在の日韓の更生保護制度を踏まえた今後の更生保護施設の在り方に関する考察
 
 

朝目覚めたらすぐカーテンをめくり、窓の外を覗き込む。

今日も曇り、いや、雨らしい。テレビをつけても、なかなか梅雨明けのニュースは流れない。梅雨明けになったら暑くなるだけで、決してその暑さが好きという訳ではないけれど、なんでこんなに長引く梅雨にイライラしているのだろう。あ、そうだ。洗濯だ。今日も、洗濯の心配から始まる1日である。

私にとって日本の夏は、今年で7回目である。多くの人から異議が寄せられるかもしれないが、私は過ごしやすいという理由で春と秋が好きな平凡な人で、特に、梅雨の湿った空気、晴れの日の強烈な日差し、夏の毎日はあまりにも苦手で仕方がない。

しかし、それでも、日本の夏を嫌いにはなれない。というか、私が好きな日本の風景は、結構夏の日常から探すことができて、そのような意味ではむしろ好きかもしれない。

真っ赤な果肉のスイカ。

スーパーの果物売り場のところで、カットされたスイカに小さく塩の袋が付いていたことを初めて発見した時の驚きとは…。後々になり分かったことであるが、韓国でも塩で食べる習慣がなくはないらしい。しかし、日本ほどポピュラーではなく、少なくとも、自分の周りではそのような食べ方をする者がいなかったため、それが不思議で仕方なかった。今は、毎回とまでは言えずとも、時に塩を振ってスイカに噛み付いてみる。そうすると、なんだか自分がこの夏の日の一風景として、そして、このマンションにいる他の住民と同じくただ住民の1人で、留学生という身分から時々込み上げてくる寂しさを紛らわせるような気がする。

夏空に広がる花火。

暑いことが苦手な私は、母国(韓国)にいた時でもそうだったけれど、夏は極力外に行かないようにする。日差しが消えてしまった夜の時間でも、まだぬるい空気が漂い、昼間の暑さが伝わる街を怯えているのだ。でも、そんな私が夏の夜を散歩する趣味を持つことになったのは、他でもなく花火である。夜空を美しく彩る花火を見るたびに、その美しさに胸が打たれる。その美しさにあまりにも感動させられ、日頃の自分の悩みや寂しさなんか全部忘れてしまいそうな感じがする。

そして、その花火の下には、焼きそば、焼き鳥の香ばしい匂いと、金魚すくいや射的コーナーの横で聞こえる子供の笑い声。これらの何気ない日常の風景が夏の夜には、なんだか次の日も頑張ろうと思わせる不思議なパワーを発する。

まだまだ、雨は続く。日照時間が3時間も満たない日が続く。満員電車での傘の置く場所に困り、びっしょり濡れた靴下が居心地悪い。

梅雨だ。これこそ、梅雨の時期だ。といわんばかりの天気が続く。

その後やってくる蒸し暑さを想像してみる。汗と一緒に頭が、体が溶けそうな天気。日差しが眩しすぎて空を直視することさえできない。焼けた肌はちょっとした痛みさえ感じる。

どっと疲れが押し寄せてくる感覚を覚える。

しかし、夏はやってくるであろう。いろんな色を帯びて、いろんな匂いを乗せて、やってくるであろう。それでまた、私は日本の夏と向き合う。いつも文句ばっかりいう人だから、暑い!という言葉を挨拶がわりにしながら、それでも、花火大会行かない? 今年こそ浴衣着てみない? など友達と夏を楽しむ計画を立ててみる。

そうして、日本での思い出が増える。

それだけのことだ。

なつを迎えることとは…。

 
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