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奨学生エッセイ
 
 
 
恩を推さば以て四海を安んずるに足る( 推恩足以保四海)
中国出身/2012年4月来日
岡山大学大学院 社会文化科学研究科 博士後期課程3年在学中
趣味:読書、ドキュメンタリー映画鑑賞
将来の夢:研究者として国際社会に貢献すること
研究テーマ:中国における区際間法律抵触と国際私法の可能性
 
 

最近、街中で歩いたら、幼児たちにおじさんと呼ばれることが増えてきました。現役奨学生の皆さんには、こういう経験がありましたか? 20代後半にして、まだ学生の身分で大学に在籍しています。考えてみれば、自分はもう30代に突入する年齢になっているから、おじさんと呼ばれるのもおかしくないと思います。ある意味、自分自身はもう家族や社会を支えるべき年齢層になっているのではないかということが考えられます。一日も早く卒業して、社会に出ていく気持ちはありながら、それと伴う不安とかもある今頃の心境です。閑話休題、本題の話について進めていきます。

老吾老、以及人之老、幼吾幼、以及人之幼、天下可運於掌。詩云、刑于寡妻、至于兄弟、以御于家邦。言挙斯心加諸彼而已。故推恩足以保四海、不推恩無以保妻子。
(吾が老を老として、以て人の老に及ぼし、吾が幼を幼として、以て人の幼に及ぼさば、天下は掌に運らす可し。詩に云ふ、「寡妻に刑(のっと)り、兄弟(けいてい)に至り、以て家邦を御(おさ)む」と。言ふこころは斯(こ)の心を挙げて諸(これ)を彼に加ふるのみ。故に恩を推さば以て四海を安んずるに足り、恩を推さざれば以て妻子を保(やす)んずるなし。)

上記白文は『孟子』巻一梁惠王章句上、第七節の中にある一部であり、『孟子』の数少ない長文の中において、孟子の王道論が最も詳しく述べられている節から抽出したのである。それを現代語に訳すと、「わが家の老人を老人として敬い労い、その気持ちを延長して、よその老人をも同じように敬い労う。そういう心がけをすべてに及ぼすなら、天下を治めることはきわめて容易である。詩経に『自分の妻と子の模範となり、やがてその徳化を、兄弟に及ぼし、遂に国家全体に及ぼして平和に治めた』とあるが、その意味は、家の者を愛敬するという此の心をとりあげて、これを広く世の中の人に施したということにほかならない。したがって恩愛の心をおし広めれば世界の人を安んずることができ、恩愛の心を推し広めなければ自分の妻と子さえ、安んずることができない。」と分かりやすく理解することができます。この白文をご覧になる際、いかがお考えですか? 遠い封建時代の王道論として、取り上げられた概念なので、もう時代の古い話だと思われる可能性があるかもしれませんが、現代社会、特に中国、日本、韓国などの東アジアにおいては、この(推恩足以保四海)という概念がまだ安定しながら、持続しているのではないかと見られます。

老人を尊敬し、児童を愛護することは儒教思想圏の各国において、古くからのよい伝統とされ、数千年来、人々とずっとこの伝統を社会の責任、行為の規範としてきました。このような道徳規範に違反した人は世の非難を浴びることだけでなく、はなはだしい場合には法的処罰を受けることもありえます。この美徳は民族の繁栄と発展のために、堅固な社会的基礎を提供してくれて、社会と安定を保証してくれています。少子高齢化という概念が叫ばれてから久しい昨今、社会の高齢化が問題となるのはもう先進諸国のみではなくなり、アジアの全域でも人口の高齢化が始まっています。近い将来には、日本についで、シンガポール、韓国、タイ、中国などの国々が高齢社会(Aged Society)となり、その他のアジアでは貧しいとされるインドネシア、ベトナム、ミャンマーでさえも高齢化社会(Aging Society)をむかえることが予測されている。先進諸国は豊かな社会を実現してから高齢化が進んだのに対して、途上国では豊かになる前に高齢化をむかえざるを得ないのが少子高齢化の新たな時代と考えられます。この時代に生きている私たちは、尊老愛幼という概念を明記し、恩愛の心を持ちまして、日々に徹底的に実施していく必要が益々重要になってきます。

家庭環境からの影響もありますが、年を取った方とお話をするのが好きです。「年の功」という言葉が表すように、人生経験はよりよく生きるうえで何よりの糧になるもの。いずれ私たちもこういう人生経験を語られる側から語る側になるのであろう。国際交流の観点から見ても、家の者を愛敬するという此の心をとりあげて、恩愛の心をおし広めれば世界の人を安んずることができるといい、これを広く世の中の人に施すということができれば、社会安定と世界平和につながると確信しております。

 
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