ホーム サイトマップ
ホーム 財団案内 財団ニュース 助成案内 よくあるご質問 お問合せ
助成案内
助成事業について
助成実績
助成募集要項
奨学生エッセイ
2015年度
2014年度
2013年度
2012年度
2011年度
2010年度
2009年度
2008年度
2007年度
2006年度
 
奨学生エッセイ
 
 
 
宝物
韓国出身。2006年4月来日。
慶應義塾大学法学部政治学科4年在学中。
趣味は、絵を描くこと、情報誌購読。
将来の夢はありますが、実現するまで公表を希望しません。
 
 

勉強のため、来日した2006年、その時まだ19歳でした。留学生活5年目を迎えた今の自分をその時の自分が見たら何と言うだろうかと、時々思います。初心を失わずに、おのずから決めた道を外れることなく、歩んできたのか。その時立てた目標は達成されているのだろうか。これらについて考えていると、恥ずかしく、顔が赤くなるばかりです。

留学生活は時間が経つにつれ、厳しくなっていきました。留学生活というのは、底知れない孤独が襲い掛かってくるものです。この孤独というモンスターは殆どの留学生を悩ます怪物です。留学生の方なら、どの方でも共感できるのではないかと思います。孤独という怪物との戦いは、あまりにも辛いものです。一瞬でも気を抜いたら元の道から吹き飛ばされ、遠回り道を強いられてしまいます。遠回りの道に飛ばされても、着実に走っていけばいつの間にかゴールに辿り着いているはずです。しかし、遠回りの道はゴールが遠くにあるがゆえ、行き先が見えず、途中で諦める者が多く出ます。自分の身の回りにも、諦めて帰国した友達が何人かいます。自分だって、逃げ道探しに血眼になっていたときがありました。学業に意欲を失い、部屋から出ない生活をしたときもありました。そのまま帰国の道まではあと一歩というところでした。半年もそのようなわけ分からぬ生活をしました。

来日した頃は、日本語の能力が殆どなく、日本語学校の担任先生に自分の考えを伝えることすらできませんでした。高校生のとき学んでおいた程度の漢字がせいぜいでした。日本語ができない自分を嘆き、日本を楽しむ気にもならず、部屋で半分ひきこもりながら、日本語の勉強をしました。志望した大学に次々と受かり、少し勉強に自信もついて、大学に入ってからはさらに頑張ろうと自分なりの努力をし続けました。友達と遊ぶことや、日本を楽しむことなど後にすればいいと思いつつ、国であの真夏の太陽の差す畑で一生懸命に耕している親を思い、学業に精進しました。その生活、2年半くらいし続けたら、孤独と思い通りに出てくれない学業成果とが重なり合い、上にも既に叙述しましたが、急に逃げ道探しに夢中になったのです。学業も手放しの状態。帰国寸前の自分を引きとどめたのは、19歳の自分でした。初志、忘れていた初志が挫折してから半年もかかってやっと思いついたのです。また、大学に入った頃の先輩の一言、「大学は、そして人生はマラソンだよ。初めからスピード出しすぎないようにね」。そして何よりだったのは、畑に立っている親の姿、この馬鹿な娘のためなら何でも笑ってしてくれる親の姿が浮かび上がり、根性のない自分があまりにも恥ずかしくなりました。そこで、今度は「勉強」という初志と「ゆっくり」を以て、次の新学期に臨みました。そうしたら、勉強もこれまで以上に成果をあげ、またゆとりもできたおかげか、大切な友達も得られました。この友達ができて初めて、自分は「日本にいるんだ」と実感しました。今や、大学最後の学期を楽しみにしています。

これまでの留学生活を通じて悟ったものがあります。「今、結果が出なくとも、失敗ばかりで、遠回り道へ飛ばされ、諦めそうになったら、焦らず、初志を思い出して、ゴールをイメージしながらゆっくりと走っていく」、「来るものは必ず来るから逃げ道求めず、堂々と向き合うべし」。これら身を以て覚えた教訓は、一生消えない自分の財産、宝物となるでしょう。大変な留学生活ではありますが、日々感謝しています。留学して良かったと。

 
前のエッセイ | 次のエッセイ
 
ページのトップへ
   
ご利用条件 個人情報保護について Copyright (c) 2003- Sojitz Foundation. All rights reserved.